パタンについてのワークショップの依頼があり、準備をしています。知識を共有する従来のパタン(もしくは、パターン)に対して、仮説としてのパタンを「Hypo-pattern」や「仮パタン」と呼ぶことを提案します。この仮パタンは、他の場所では有用ではなく、自分たちでプロダクトやチームを作るときなどに用いる「自分たちだけのパタン」「その場所だけのパタン」で、必然的に自分たちの状況に適合してしています。
昔に書いたパタン論文
2013年に発表した論文です。
https://dl.acm.org/doi/10.5555/2725669.2725708
発表した後、会場にいた全員が立ち上がって拍手していただきました。 Ward Cunninghamさんから"Execellent work!"と握手してくださいました。参加者の何名かの方から"This paper is important."のように評価してくださいました。今でも忘れられません。
この論文は、私一人の力ではなく、共著者を含め、多くの方々のご協力によるものです。心より感謝します。 また、昔やっていたことに興味を持っていただけるのはうれしいことです。
知識共有のためのパタンとパタンランゲージ
現在、パタンやパタンランゲージは、知らない分野の言葉を知るために有用な方法であり、ITや社会学などの多くの分野で活用されています。言語を知ることによって、その領域においての会話を助け、そのパタンの世界観による成果物を生み出すことを助けます。
このようなパタン1やパタンランゲージは、成功体験を記述し共有します。パタンは、それまでの過去の出来事をまとめていることになります。
未来のためのパタン(仮説のパタン)と自分たちのランゲージ
一方、この論文では「Pattern for future (未来へのパタン)」を紹介しています。
「未来へのパタン Pattern for future」は、状況や問題に対する仮説としての解決策であったり、解決策に対する仮説としての原因であったりします。仮説に過ぎず、検証されていないため、パタンの成立条件も満たしておらず、パタンの形式としても意味としても完成していません。
論文の発表後、「未来へのパタン」と、似たような名前が提唱され困っていました。よくよく考えてみると、パタンとしては未熟な状態であり、単純にパタンと呼ぶと混乱を招きます。
…(ここで数年が経過します)…
仮パタン Hypo-pattern
仮説の英語は Hypothesis です。"Hypo-"という接頭語を辞書で引くと、"below, beneath, under"が出てきます。「下」という意味のようです。つまり、「thesis (理論)」には満たない、「理論の下である2」の意味から「仮説 (hypothesis) 」となっているようです。
「仮説 Hypothesis」と同様に、この未来へのパタンは、パタンとしては形式と意味のどちらともに十分ではありません。
パタン pattern に接頭辞である hypo- をつけた「hypo-pattern」、さらには「仮パタン」「かりぱた」とするのが良いのではないでしょうか。 関連して「未熟なパタン」「みぱた」のように別名がわかりやすいのではないでしょうか。
知識共有のためのパタンと、 仮パタン(Hypo-pattern)は違う問題領域
検証されたパタン、または、そのパタンランゲージは人類の英知です。貴重な財産です。ある領域における知識を知るために有用な手段です。しかし、自分たちの個別の領域のいては近似的な解決策です。
一方、仮説のパタンである仮パタンは「自分たちのプロダクト」「自分たちの場所」のような領域だけで使われます。事例としては発表できますが、他の領域においての有効性は保証できません。そのぶん、自分たちの領域においては、より状況に寄り添った<質>の高い仮パタンとなるのです。
仮パタンこと hypo-pattern と、いわゆるパタンは、どちらも大切で相補的な関係であり、扱う問題領域が違うのです。
ただ、第四次産業革命やDXが叫ばれる領域において、確定したパタンを活用するだけではなく、仮パタンを生み出し続けることこそに価値があるのではないでしょうか。
これからの言葉を作るために
これは、おそらく『デザインパターン』のようなIT業界や社会学などで広く使われているパタンとは少し違う世界です。「パタンを集めて公開し、それを使う」のではなく、パタンを生み出し続けながら使う世界は、残念ながらあまり一般的ではないようですので、少しだけ紹介しました。
まだまだ書くべきことは多いのですし、適切な場所に投稿すべきとは思っていますが、共通認識のために仮にメモしておきます。
宣伝:ワークショップや仕事します
このような仮パタンづくりを含めた方法を多くの方に身につけ、活用して欲しいと思っています。書き足りないことも、議論します。
そのため、オンラインで開催できるように準備しています。 Twitter や Facebookでのアカウントも @motohasi です。