追記
2016年10月18日に東武鉄道から中間報告がありました。列車の一部脱線に関する調査結果と対応について(中間報告) PDF形式によるとレールに問題は、なかったようです。
2016年5月18日に東武東上線の中板橋駅において脱線事故があった.この事故の原因が調査されているだろう.しかし,「東武東上線 中板橋 脱線事故 原因」で検索しても,公開された情報では明確に原因が特定されていないように感じた.
10両編成の中間1両だけがなぜ突然脱線したのかなど事故には謎が残り、原因究明へ向けた調査が続いている。
東武東上線「中間車両のみの脱線」で深まる謎 | 通勤電車 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
私自身は,鉄道の趣味もなく,近所に住んでいる利用客である.子どもが小さいので,泣いた時など一緒に現場を見に行っていた.子どもが運転手さんに手を振ると,振りかえしてくれるので,子どもの機嫌が良くなり,大好きな場所のひとつである.地元の住民として気がついたことことがある.本来ならシミュレーションと実験を検証したいが,時間が取れないためメモのみを残しておく.
事故状況
2016年05月18日に東武東上線中板橋から大山に向かう途中で脱線事故があった
- 該当場所(踏切の近くの分岐器)は,通過する急行(本線)と待ち合わせる普通(側線)がある
- 今回の事故は,側線から合流する(つまりカーブしている,曲がっている)普通列車で発生した.
- 事故写真を見ると,枕木に亀裂があり,トングレールが曲がっている.
- 中間車両である5両目が脱線した
- 脱線が起こった場所は,踏切ちかくの中板橋駅を出たポイント(分岐器)である.
- 当該場所は,線路,枕木,砂利で構成されるバラスト軌道である
作業仮説(事故原因を推定するための前提)
- 線路も数カ月以内に保守され異常が認められなかったと推測
- 速度超過はなく,運行上の問題はなかったと推測
- 線路上に石などの異物を置かれた形跡はなかったと推測
- 車両点検時に問題はなく,リスク事項は認められなかったと推測
以上の作業仮説により,1.と2.より脱線係数を超えず,3. と4.により事故が起こる要因が明確になりにくいのではないか.
仮説(脱線した原因の推測)
それでも脱線してしまった.
- なぜ脱線したのか
- なぜ5両目が脱線したのか
- なぜ台車が割れたか
- なぜ現象が発生するのか
少しずつ状況を見ていこう
なぜ脱線したのか
該当ポイント(分岐器)における電車通過時の線路の沈み込みが激しかった(目視で確認できる程度なので3cmから5cm程度か).枕木を含めて線路が沈み込んでいた.
事故が発生する半年以内に,当該場所のバラストの補充が行われていたようだ.子どもと見ているときに「線路は曲がるんだね〜」と話していた(その時は,事故に関係するとは思っていなかった).
事故直後の写真も,線路と砂利(バラスト)に隙間があることがわかる.側線から侵入した普通列車は,線路による沈み込みによって,車輪がレールを横方向に押す力(横圧)に耐えられず,脱線したのではないか.
なぜ5両目が脱線したのか 駅を出発した列車は加速するため,速度の増加と,作用時間の増加によって,中間車両が脱線したのではないか.ただ,前後方向への引っ張り力により,一部だけにとどまったのではないか.
なぜ台車が割れたか 台車が割れたことは原因ではなく結果である.つまり,脱線した結果,台車が割れ,トングレールの変形や枕木の亀裂が発生したのではないか.
なぜ現象が発生するのか 該当箇所は 踏切とポイントの距離が短く,該当線路に働く応力(物体の内部に働く物理的な力のこと)が高い.線路の単位距離あたりにかかる力が大きいため,その箇所のバラストが排除され,枕木の沈み込みが大きくなるのではないか.つまり,ポイントと踏切の間の補強が根本的解決となるだろう.
この記事において「線路の沈み込みが大きかった」ことは観察した事実であり,それ以外の「〜ではないか」と記述した文は私の推測(仮説)である.模型実験およびコンピュータを用いたシミュレーションによって,これらの推測(仮説)を検証したいが,専門家に譲りたい.もし仮に実験やシミュレーションを行うに際し,助言や監修が必要であればお声がけください.
なお,本事故により,けが人が でなかったことは,不幸中のさいわいである.引き続き,安心して利用していきたいと思う.