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子どもが自分で行動するために判断基準を作ろう - 子どものしかりかた (5/7)

子どもが自分で行動するために判断基準を作ろう

子どもは言われたことしかやらない

しばしば このようなやりとりがあった:

子「学校の宿題と,稽古はどっちが先にやるの?」
親「学校の宿題が先だね」
子(宿題をやる前に,本を読んで勉強している)
親「宿題を先にやらないの?」

たくさん聞いてくれてうれしい反面,どのように順番を決めればいいのかわからず困っていることに気づいたのである.

背景と方針:子育ての願望とジレンマ

子育てとは,子どもの成長を支援することである.子育てにおいて,いろいろな親の願望があるが,うちで代表的な例を紹介したい.

自立して欲しいと願っている, 自分で考えて行動でき,自分で食べていけるようになってほしい.自分でいろいろなことをわかるためには,様々な経験が必要になる.特に,極端な経験や失敗は,いい思い出にもなり大きく成長させられる.たとえば,海で遠くまで泳ぎ,潮の流れにハマってしまったとか,木に登ったけど降りるのが難しくなってしまったとか,いろいろな経験や失敗を元に成長している.いろいろな経験をすることは 行動の選択肢を増やすこと(自由にする) を志向している.美味しい料理を食べるのも楽しむのも経験するのは子ども自身であり親ではない.

健康に育って欲しいと願っている. 事故や怪我にあわず,健康に育ってほしい.たとえば,交通事故や大きな病気に回避したいし,もし怪我や病気をしていれば快癒してほしいと願っている.事故や怪我,失敗を回避することは 行動の選択肢を減らすこと(制限する) を志向している.

この願望にはジレンマがある. どちらの願いも子どもを思ってのことだが,違う志向性を持っている.いろいろ経験や失敗をしてほしいが,一線を超えてしまうと事故や怪我などによって継続的な幸せを享受できなくなってしまう.それ以外にも,他人に迷惑をかけてほしくないと願えば.他人への依存度を増やすことと,他人から依存度を減らすことジレンマもある.日常生活においても,このようなジレンマが発生するのが常ではなかろうか.

親自身も,子どもだった時からの経験が積み重なり,それが元になって願望が生み出されている.このような願望は,親の傾向は子どもに連鎖することが言われており,意識しないで判断や行動していることが多い.

判断基準

それゆえ,自分たちが判断するときの基準(判断基準)を共有し,それを前提にして基本的に自分で考えるようにする. 判断基準とは,ある状況下でどのように行動するかということ,物事を判断する際のよりどころとするもの 1である.自立と元気の育つために必要な判断基準を共有し,それの上で自分で考えて行動すればよい.その了解された判断基準に基づいて行動すれば,おおよそのところでブレない.

判断基準は,それぞれの家庭や文化によって大きく異なるが,大きく異なるが故に,共有が難しい. 日常生活において葛藤やジレンマが発生していることは,ある程度の判断基準を決めておくと楽になる(考えなくて済む).

妥当な判断のためには,情報の透明性を向上させ,情報量を増やすことも大切である. 子どもは,自分で認識し考えている.本稿のような判断基準を用いた上で,子ども自身が自分で感じるように仕向けるようにしていく.できる範囲で「本物に触れる」「正直に話す」「隠し事をしない」などの心がけも妥当な判断をしていく支援となる.

判断基準の内容

  • 最小限の判断基準を目指すこと
    いろいろなことを考えたくなるけれど,大切で外せないものだけを判断基準としたい.最終的には,自分だけで決めていくように順次すすめていく.
  • 具体的な行動に関連付けられること
    「ちゃんとする」「きちんとやる」ではなく,外出前に身だしなみを鏡でチェックするなど具体的な行動に関連付けられるようにしておく.
  • 現実的で合理的であり運用可能であること
    特に子どもは理想や夢を追い求めたくなる.しかし,理想を追い求めてしまうと,続かないし実情から乖離してしまう.簡単に使えることが大切である.
  • 緊急時や例外処置を決めておくこと
    大人に相談する,110番やセコムで呼び出しなどを決めておく.できる限り現物を確認すること.

判断基準の決め方

  • 一緒に話し合うこと
    なぜ大切なのか,どのような問題や事例があったのか,どのように感じているのかを一緒に考えよう.あらかじめ親同士(同居している夫婦や祖父母)で話し合うのも重要である.
  • 判断基準は個別のもの
    それぞれの状態に応じて一緒に話し合うこと.たとえば,5歳児であれば,5歳児も理解できるようにする(例:車から降りるときは一緒だよ).たまたま共通の判断基準があるかもしれないけれど,それぞれの個別の判断基準を尊重すること.
  • 判断基準は仮のもの(変化する)
    成長に伴って不要になる判断基準もある.たとえば,幼児の頃はトイレのドアを開けて運用していたけれど,成長に伴ってドアを閉めるようになるなど,当たり前のことが変わる

判断基準の例

なお,現在11歳,8歳,5歳の子どもと数年間のやりとりから判断基準の例を紹介する.子どもの人数,性格や年齢,家庭状況そのほか 様々な状況によって判断基準は異なるので,あくまで事例として参考にしてほしい.

  • 安全と健康が優先
    • 子どもたちだけで火を使ってはいけない(親と一緒に練習しよう)
    • 子どもたちだけで玄関を開けてはいけない.困ったときは (1)親に電話,(2)セコムの呼び出し (3)110番する.
    • 地震発生時や災害時の対応を決めておく.
    • ファミレスやコンビニの駐車場では親の近くにいること(車の運転席から子どもが見えないことを体験させる)
    • 公園では,子どもから親が見えるところで遊ぶ(5歳児のみ.ちゃんと見ていないとダメだけどね)
    • たくさん体を動かしてぐっすり寝る.「夜になっても眠くならないときは遊びが足らん!もっと遊べ〜!!」
    • ご飯を食べてから,おやつを食べる.「ごはんを残したら おやつは なぁーし!!(eテレはなかっぱ』)」
  • 自分を大切に
    • 「こだまでしょうか(金子みすゞ)」のように他人に向けた言葉や行動は自分に戻ってくる.自分とご縁のある人や物を大切にしなさい
    • 親も先生,教科書も間違えるときや わからないときがある.信じてはいけない,疑いなさい.
    • 細かいことや他人を気にしすぎると 自分がつらくなるよ
    • 例外:試合や試験など無理してでも頑張る
  • 学校優先(小学生)
    1. 手洗いうがい+水分補給(学校より,健康が優先される)
    2. 夏と冬はエアコンを入れる(なぜか忘れて体調を崩す)
    3. 基本的に,学校の宿題と用意が優先
    4. 計画したタスク(遊びも含まれる.別途「家庭の計画づくりとタスク管理」で書きたい)
  • 「あきらめたらそこで試合終了ですよ」
    漫画『スラムダンク』より具体的な行為があったときに引用する.たまに安西監督の絵を見る.

4つの判断基準を紹介した.使い方は,日常生活の中に,この判断基準を織り込んで使う.たとえば,他人を傷つけるような言葉を使ったときは「自分を大切に」と伝える.たとえば「友達に届けたいものがあるから(学校優先より)先にやったよ」のように会話は成り立ちやすい.早く寝ないときは「安全と健康が優先だよ」の健康である.最近は子どもたちから早く寝ようと言われることが多い2.家族の中で普遍的な判断基準があるため,平等に意見を言うことができる.

判断基準を作ったところ(結果)

子どもたちは判断基準を使って自分たちで考えて行動することが増えた.わからないときは聞いてくれるし,場合によっては提案もしてくれる.たとえば「車のドアを開けていいときは安全を確認してから教えてほしい」などの提案があった.親としては安心して過ごせるようになってきたし,楽になってきたように感じる.親の考えだけでも子どもの考えだけでもない状態とも言える.

小学生の子どもは,たくさん宿題があるし忙しいからだろうか,このような標語としての判断基準を多用し,効率的なコミュニケーションを図っている.ただし,5歳の保育園児は,標語としてほとんど使っていないようである.このあたりは継続して見ていきたい.

これからは,このような判断基準を話し合う必要もなくなるかもしれないし,内容がもっと高度になるかもしれない.なにはともあれ,子どもたちに「生きていてほしい,できれば すこやかに過ごしてほしい」と心から願っている.

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次の記事は なぜしかるのか,どのようにしかるのか - 子どものしかりかた (6/7)だよ.

記事一覧

  1. はじめに - 子どものしかりかた (1/7)
  2. 子育てとしかることと怒ること(定義) - 子どものしかりかた (2/7)
  3. 子どもは しかって強く育てるのか,ほめて伸ばすのか,子育ての心がけ(欺瞞と正直) - 子どものしかりかた (3/7)
  4. どのぐらいしかるのか(頻度と度合い) - 子どものしかりかた (4/7)
  5. 子どもが自分で行動するために判断基準を作ろう - 子どものしかりかた (5/7)
  6. なぜしかるのか,どのようにしかるのか - 子どものしかりかた (6/7)
  7. おわりに - 子どものしかりかた (7/7)

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  1. https://thesaurus.weblio.jp/content/判断基準より

  2. やることあるんだけど添い寝は気持ちいいので従ってしまうことが多い.