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なぜ子どもは勉強できなくなるのか

子どもを育ている上で留意したいポイントをメモしておく.この文章は,特に目新しいことはないし,むろん想定通りになんかならない.

基本を学ぶこと

人生,学力だけではないし,学校で学ぶことだけでもない.地域社会や友人,家族など,様々な機会からも学べる.親は子どもに義務教育を受けさせる義務はあるが,その内容を理解する/させる義務はないかもしれない.しかし,義務教育における割り算や分数,読解力は,日常生活や業務においても必要であることが多い.義務教育の内容は,おおよそ生きるために必要な糧になるといえよう.

たとえば,「牛丼屋」を経営するなら,お金儲けができるかを知るためには社会を使い,食材の安全性は理科を使い,お金の計算や仕入れについては算数を使い,お客さんや従業員とのやりとりは国語を使う.むろん,判断をするために道徳が基準になり健康な体を使う体育,料理するには家庭科と,あらゆる教科を活用できる.これらの道具を使いこなし,さらに新しい道具を生みだしながら,気持ちを形にして生きてほしい.つらいこともあるけれど,なにより楽しいことだし,自由を獲得する手段のひとつでもある.

今後も内容や方法は議論されていくとはいえ,「教育」は大切なことだと世界中の多くの国が考えている.自分の子どもには「天才」にならなくても,せめて基本的な教育として義務教育の内容は身につけてほしいと願っている.

義務教育で学べていない子どもたち

そのような義務教育における学力低下について話をよく聞く.一方,平均的な学力低下についての賛否両論の意見があり,どちらが正しいかの意見は保留にしたい.他方,局所的な学力低下については,いくつか報告がある.

  • 「「教育困難大学」のあまりにもひどい授業風景 | 学校・受験 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準」の記事に 小学生レベルの知識が欠落している学生たち」が出てくる.小学生の学習が大きく欠落していれば,中学や高校における学習も困難になりやすい.

  • 東京都のすべての公立小・中学校は授業改善推進プランを公開をしている.学力調査の実施後「調査の結果報告書を作成し,結果の詳細や授業改善のポイント等を発信するとともに,東京都のすべての公立小・中学校が,調査結果から自校の課題を分析して「授業改善推進プラン」を作成し,授業改善を行っていく」ものである.

    近隣の小学校の状況は,このようになっているようだ1

    • A小学校の授業改善プランより

      • 6年生の国語> 文章全体の構成を考えて書こうとしているが、十分身に付いているとは言えない。学習した漢字を正確に読んだり書いたりして、文章の中で使うことが十分にできていない。
      • 6年生の算数>四則演算では わり算、分数の通分、約分を苦手としている児童が多い。 のように わり算や分数の計算が難しいようだ.
    • B小学校の授業改善プランより

      • 6年生の国語> 正しい鉛筆の持ち方ができない
      • 6年生の算数> 0のあるわり算の計算も定着が難しい。既習事項の定着が不十分なため、新しい単元にスムーズに入れない

    分数は2年生から段階的に学び,わり算は3年生で学ぶ内容が6年生になっても理解できていないことを示している.

    さらに,中学校の状況も見てみた

    • C中学校の授業改善推進プランより引用
      • 国語> 小学校低学年で修得するはずの漢字が書けなかったり、作文のルールが定着しておらず、正しく書けなかったりする生徒が見受けられる。
      • 算数> 小学校段階の基礎的な知識や技能の定着が不十分な生徒もいる。
    • D中学校の授業改善推進プランより引用
      • 国語> 語彙力が低く、長文を読むことに抵抗はある
      • 算数> 基礎的な学力不足から授業内容の理解が困難な状況がどの学年にも見られる。
      • 理科> 実体験の不足からか、現象をイメージできないことがある。

この地域の学力調査において,改善傾向にあるものの都道府県平均や全国平均を下回っている教科が多かった. 小学校低学年のつまづきが,そのまま中学から,その継続する高校や大学へ影響していることが想像できる.

小学校や中学校に通うだけでは義務教育の内容を十分に理解できない局所的な問題があることがわかる.

生活習慣と家庭学習への関心

学力調査および授業改善プランにおいて,生活習慣と家庭学習だけでなく,学校の授業についての調査および評価が含まれている.たとえば,アクティブラーニングの実施,ICTの活用,授業のめあて(ねらい・目標)の提示,家庭学習のサポート,研修や研究会に参加した成果の還元などが調査されている.さらに,公開授業(授業参観)の機会を通じて授業を評価し,学校長を含めてフィードバックや対話することは現実的ではある.

しかしながら,ある親として,実施可能性の観点が必要である.たとえば,いったん入学した公立小学校においてクラス替えや転校などの手段は,日常的に行われているように見受けられず,容易に実施可能とは言えない.また,第三者の授業の調査に基づいた改善活動は,教職員以上に専門的な知識や経験の必要性,個別の状況理解,現実的な先生への負担を鑑みて,ある親として実施する範疇を超える.そのため,すでに入学した小学校における授業は,おおよそにおいて与えられた状況として受け入れることが,ひとりの親として現実的である.

そのため,この記事は,授業の調査およびその改善については範疇とせず,ある親(私)として実施しやすい領域である生活環境と家庭学習に関心を持って記述する.

学力と関連する生活習慣

学力調査では生活習慣などのアンケート調査が行われている.結果と考察から学力との関係性が見出されている抜粋する(太字と下線は筆者).2

  • 生活習慣について
    • 朝食を毎日食べている」と回答した児童の平均正答率は、全ての教科で平均値を上回っている。
    • 家の人と学校での出来事について話をしている」と回答した児童の平均正答率は、全ての教科で平均値を上回っている。
    • 月-金曜日に、テレビゲームをしている時間が2時間以上の生徒の平均正答率は、全ての教科で平均値を下回っている
    • 月-金曜日に、テレビゲームを「全くしない」又はテレビゲームをしている時間が2時間以下の生徒の平均正答率は、全ての教科で平均値を上回っている。
    • 読書が好きである」と回答した生徒の平均正答率は、全ての教科で平均値を上回っている。
  • 規範意識
    • 「規則を守っている」意識のある児童の平均正答率は、全ての教科で平均値を上回っている。
    • 「規則を守っていない」という児童の平均正答率は、全ての教科で平均値より15p以上(中学では20p以上)下回っている
    • 「いじめはどんな理由があってもいけないことだと思いますか」の問いに対し、「当てはまらない」「どちらかといえば当てはまらない」と回答した児童は、全ての教科で平均値を下回っている
  • 学習に対する関心・意欲・態度
    • 家で、自分で計画を立てて勉強をしている」「どちらかといえば、している」と回答した生徒の平均正答率は、全ての教科で平均値を上回っている。
    • 家で、学校の宿題をしている」と回答した生徒の平均正答率は、全ての教科で平均値を上回っている。
  • テレビ鑑賞やテレビゲームについてのデータ
    • 「普段(月-金曜日)、1日当たりテレビやビデオ・DVDを見たり聞いたりするのに費やす時間は3時間以上である」と回答した児童の割合が32.8%。「4時間以上見たり聞いたりしている」と回答した児童の割合 は17.3%。
    • 「普段(月-金曜日)、1日当たりテレビゲーム(コンピュータゲーム、携帯式ゲーム含む)に費やす時間は3時間以上である」と回答した児童の割合は17.7%。「4時間以上している」と回答した児童の割合は9.8%。

この調査では,長時間(2時間以上)テレビゲームの時間を多さと学力低下の関係性,朝食と家族との会話が増やすことと学力向上との関係性があることがわかった.家での学習も計画を立て,宿題を行うことと学力の関係が示されている.

平日の1日4時間は,17時に帰宅すれば,就寝時間に近い21時までである.帰宅してから就寝まで,ほぼテレビかテレビゲームを行なっていることを意味している.長時間のテレビ鑑賞やテレビゲームは,学習時間を減らし,学習に対する意欲をも減らすのだろう.

心がけたいこと

先の調査では,テレビ鑑賞やゲームを少なくし,朝食を食べ家族との会話を増やすことが大切であることが示されていた.月並みな結果とはいえ,このような日々の習慣が,小学校や中学校の学力,ひいては大学や社会における学力に結びつくのだろう.むろん,大切なことは学力だけではない.しかし,義務教育の内容を知り,それについて考えることは,社会的な生活を歩むことを容易にするのではないだろうか.

金銭的な余裕があれば,通塾や家庭教師もひとつの選択肢かもしれない.学習する時間と習慣を身につけられる.親は,日々の日常で忙しいし,様々な事情もあるとは思うが,親と学校や宿題の話題にすることも忘れてはいけない.子どもと朝ごはんを食べ,会話するたびに,子どもの意見に新鮮な驚きをよく感じる.自分自身が学習したことのアップデートもできる.我々が「常識」と思っていることでも,よくよく考えてみれば不思議なことが多くある.なにより楽しい.

私自身,子どもを天才に育ていることを目的にしていないものの 5000人の天才児を45年間追跡してわかった、親が知るべき「8ヵ条」と「4つのポイント」 | クーリエ・ジャポンでは "「天才児を産むのは、遺伝子と環境の相互作用である」と主張。「生まれか育ちか」論争に意味はなく、親が適切な教育を施すことで子供の才能を伸ばすことができる" とある.遺伝子の操作は現実的に難しいことが多いが,できるなかで環境を作っていくことは可能ではないだろうか.

義務教育の内容を理解し,その理由や不思議を探究することも良い経験になるだろう.家では,テレビを消しゲームをお休みして,子どもとの時間を共有し,会話していくことを大切にしていきたい.このように心がけることによって,子どもの学びを支援し,子どもたちに少しでも自由に生きるための手段を身につけてほしい.そして,さまざまな経験や関係を通じて学び,それを,活用していく喜びを感じてほしい.

小学生の子と,これから小学生になる子へ.

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追記

  • 学校の授業について調査の必要性について指摘があり「生活習慣と家庭学習への関心」の章を追記しました(2017/09/21).ご指摘ありがとうございました.

  • 友人H氏による「学習や勉強,自己研鑽は,自由になるための手段である(文言は修正)」を本文に反映させた.ありがとうございました(2017/10/03).

  • 子どものとのやり取りを楽しんで成長する7つの心がけ - ari's worldにまとめてあります.


  1. 子どもたちの通っている学校へ配慮し,引用および抜粋の元資料の名前およびリンクは示さない.

  2. 子どもたちの通っている学校へ配慮し,引用および抜粋の元資料の名前およびリンクは示さない.