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チームの育て方 (3):プライドと自信

チームで仕事をしているとき、殺伐とし崩壊することがある。 逆に、タフな状況ながら、一体感を感じ、成果を出しやすいチームもある。 一体、何が違うのであろうか。

複数のメンバーからなるチームをどうやって育てるのか、チームと一緒に自分が育つのかを考えてみたい。

疲弊させるアクション

チームを壊すアクションとしては、どのようなものがあるのだろうか。 たとえば、こんなことは、チームを疲弊させる:

  1. メンバーをうらやましがり、足を引っ張る

    あるメンバーがよりよい状態にいるとき、うらやましがる。 そのメンバーのアウトプットについてレビューやフィードバックでは、徹底的に批判し、否定し続ける。 また、そのメンバーの友人や知人に対し、ネガティブな印象を流す。 その結果、相対的に自分の評価があがる。

    ただし、他人の批判を繰り返すことは、自分自身の評価も巻き込まれることになる。

  2. 主体的に動く人を、徹底的に否定する

    メンバーがリーダーシップを発揮している人は、自分の影響力が弱まるため、その活動や提案には「興味がない」「関係ない」「まったくなっていない」など否定的なコメントを返し、さっぱり会話を終了させる。 さらに、そのメンバーの能力不足を厳しく指摘することも忘れてはならない。 強力なのは、自分の欠点をメンバーの欠点として責め立てると、相手は反論しにくくなる。 その結果、主体的に動く人は距離を置くようになる。

    ただし、自分に関係のないところで活動が行われることになる。

  3. 自分の成果や立場を極めて大切にする

    チームで聞いた参考になる話しや成果は、許可を得ず、自分のこととしてTwitterなどのSNSに公開する。 また、自分の目的実現や評価向上のために、チームでの取り組みを、あくまで自分の取り組みとする。

    自分の立場を保身もしくは上げるためにチーム内の政治に力点を置くと、メンバーは安心してチームに貢献し、進めることが困難になる。

    ただし、メンバーはチームへの情報公開や議論を躊躇し、距離を置くようになる。

このように、自分のプライドや立場(エゴ)を大切にすると、チームは疲弊し、健全なコミュニケーションが成り立ちにくくなる。

疲弊する理由

Team Geek ―Googleのギークたちはいかにしてチームを作るのかには、このように紹介されていた。

あらゆる人間関係の衝突は、謙虚・尊敬・信頼の欠如によるものだ。

経験的に、人間関係の衝突が、チームで作業する上でボトルネックになる。 衝突してから、和解するためのプロセスを踏むことも大切だけれども、衝突したまま対立し、それらが改善せずに崩壊した事例を多く見かける。 そのため「衝突が必要である」と考えるのは、非効率ではなかろうか。

特に、内向き(自分のプライドやエゴ、チーム内政治)などに関心があると、チームとして成果をあげることを阻害する。

エゴが強いメンバーはどこにでもいるとは言え、利益や結果を得るためにプロジェクトを適切に推進したいと願っているメンバーも、ついエゴが刺激されてしまう。 エゴやプライドが強い人と接していると、他のメンバーも、どうしても同調し防御的になり、自己顕示欲が強い状況に陥りがちである。

その結果、プライドや立場を保とうとする態度がチーム全体で伝播し、そのために時間や労力が浪費されることになる。

注釈:ブライドと自信という言葉について

エゴは、心理学や哲学をはじめ様々なところで議論され定義されているが、ここでは自分の評価やプライド、立場を大切にする態度とする。

本記事において、プライドと自信を使い分けているので理解していただきたい。

  1. プライド(自尊心)とは、自分を優秀だと思う気持ちを大切にし、尊大に構え、自分の品位を保とうとすることである。他者評価で傷ついたり、上下しやすいもの。
  2. 自信とは、自分の才能や価値を信じることである。他者評価に揺らぐことのすくないもの。「絶対的な自信」という表現が近いかもしれない。

チームを育て上げるアクション

チームを疲弊させるアクションの反対が、チームを育て上げることになる。 あくまで相対的なものであり、努力し、心がけるものだ。

  1. 確実な自信

    人からの評価や基準はたくさんあり、他の人の行動が気になってしまう。 そのようなときは、心の中でひっそりと自分の才能や価値を信じる自信をしっかり持とう。 たとえば、どんなところでも生きていけると考え、自分の才能や価値を作り出すためには、それなりの努力や取り組みが必要である。

    自信がないと、ついつい不安になり、自分を守りたくなってしまう。 隣の芝生が青く見えるように、他人が良い状態にいるように感じ、うらやましくなり、足を引っ張りたくなる。 あくまで他人からの評価は、他人の仕事だ。

    自信を持ったの結果、自然体でゆったりと過ごせるようになる。 ただし、このような態度を持っていない人からは、理解できない不思議な態度に思える。

  2. 良いところの発掘

    一緒にいる人の良さや、アウトプットの良さは、よくわからない。 ついつい、欠点や悪いところに目がいってしまう。 評価や慣習などの文化によって、その悪いところが決まってしまう。

    否定や非難は、誰にでもできる。 いくら非難や否定しても、かたくなになって、なかなか改善しない。 チームや人は、育ちにくいのだ。

    そこで、人やアウトプットの良いところを探すようにしよう。 同じ視線に立って、どのような点が良いのか、どのような良い効果があるのかを地道にさがそう。

    これは、言葉で言うほど、簡単なことではない。 どうしようもないと評価されていた人を、自分の部署に引き取ったことがある。 そのときの業務から考えると、プライドも高く、ミスも多く、あまり成果を出していなかった。 しかしながら、組織側とそのメンバーの教育に数年を費やしたが、 とらわれない発想や問題提起力はすばらしく、そのプロダクトやサービスの品質を向上させることに大きく寄与した。

    必ず良い点はある。絶対にだ。 へそを曲げ、仕事をしないように見えていても、それには妥当な理由があるのだ。 良いところを発見し、それを一緒に育てる喜びは代え難い貴重なものだ。

    回り道かもしれないけれど、それが一番早い。

  3. 外に関心

    チームの内部に関心があると、その関心を充たすために、プライドや政治などの関心が出てきてしまう。 「何をしたいのか」とか「どのような選択があるのか」とか問うことも内省し、成長するときに大切なことだ。 しかし、ネガティブなフィードバックが強すぎると、出力が低下する。

    そのようなときは、社会や外部にある問題に着目し、どのように解決するかに関心を示す。 プロジェクトであれば、そのプロジェクトが対象にしている問題や理由を考えよう。 チーム内や組織内への関心が薄まり、チームがその問題をという関係性が強化される。

    殺伐とさせるようなアクションにも関わらず、疲弊に対抗するような体力や器を持ち、外に関心を向けチームに貢献していると、だんだんとチームが健全になっていくことが多い。

チームを壊すアクションについての対策

実際のところ、エゴレス的な振る舞いや文化は壊されやすい。 そして、経験上、そのような文化を壊すようなメンバーはどこにでもいる。

やはりエゴレス的な文化を破壊するメンバーにも良いところがあり、文化を守りながら、そのメンバーの力を活かすような取り組みが必要になってくる。 チームを育てる価値を説明しながらも、ひとまず:

  • 役割やスコープを明確にし、その範囲で活動していただく。チームが成り立たないぐらい破壊的な状況であれば、独立した活動で貢献していただく。
  • 高いハードルや問いを投げかけて、存分に動いていただく。プライドや立場を保全するために真剣であることが多くある。
  • リーダーもしくはマネージャなどが、その人の対応担当として、メールの返信や苦情の受け口になる。

チームを育て上げる原則

Team Geekで紹介されているように謙虚(H)・尊敬(R)・信頼(T)のHRT(ハートと読む)の原則に価値を置くことにより、無用な衝突を避け、成果を上げやすい文化を育てる。

  1. 謙虚(Humility): 世界の中心は君ではない。君は全知全能ではないし、絶対に正しいわけでもない。常に自分を改善していこう。
  2. 尊敬(Respect): 一緒に働く人のことを心から思いやろう。相手を 1 人の人間として扱い、その能力や功績を高く評価しよう。
  3. 信頼(Trust): 自分以外の人は有能であり、正しいことをすると信じよう。そうすれば、仕事を任せることができる。

自信を持つことと、良いところの発掘外に関心を持つことは、それぞれが独立しておらず、相乗効果を発揮する。 同時に、謙虚(H)・尊敬(R)・信頼(T)のHRT(ハートと読む)の原則に価値をおくことは、チームを成長させ、成果を出すことができる前提になる。

このような境地に到達することは困難ではある。しかし、少しずつ努力し、そんな人間になりたい。

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謝辞

  • 自信とプライドについては、私の師匠および友人のひとりである故諏訪氏から学んだ。
  • 問題提起をしてくれた友人に、このようなブログを書く必然性を作ってくれたことについて感謝する。
  • 「外に関心」については、私の師匠および友人のひとりであるY氏、「貢献」については、私の師匠および友人のひとりであるH氏から学んだ。そのほか様々な方々から、深く学び、かつ、サポートしてくださっている。実践と成果を目のあたりにし感動することがしばしばある。学んだことは奥深く、そして、私の身に少しずつ染み込んでいる気がする。感謝しても、感謝しきれない気がする。

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