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あるかどうかわからないけど、あるみたい。ありがとう。

チームの育て方(6):ダブルバインドとの戦い

わかりやすく理解を促すため、具体的な会話を記述した。 もしかしたらプロジェクトや仕事場に類似したケースがあるかもしれないけれど、このシリーズに特定のモデルはいない。


AさんとBさんは、対等な関係性にあるが、Aさんはリーダーになりたいと公言している。 AさんとBさんは、別々のプロジェクトを各々進めているが、Aさんは一緒に仕事がしたい、ということで、どんなプロジェクトにしようか、という話しになった。 そんなときの会話だ:

A「一緒に仕事がしたい。一緒に仕事ができなければ意味がない。」
B「いいよ〜。」
A「何がしたいの?」
B「僕のビジョンは◯◯だから、こんな仕事がしたいんだ…(と詳細を具体的に述べる)」
A「ダメだ、なってない。それは違う!」
B「では、△△は?」
A「興味ない」
しばらく、くりかえし…
B「え…ところでAは何をしたいの」
A「ビジョンを作りたい。まったくビジョンがないからダメだ。だから一緒に仕事はできない!」
B「えっ…」

ふりかえりを経て企画会議になった。

A「抽象的考え方はダメだ。(方法論である)××法とか興味ない。」
B「そうなんだ…(確かに具体的な話しも必要だよな)」
A「で、何がしたいの?」
B 自分の経験したプロジェクトで繰り返し発生したケースで示したあと「これらのケースに共通する根本的な問題を解決したいから、このような戦略をとりたい、こんな効果を期待しているよ。」
A「××で言うとね…」と、その後、専門用語を使いながら指摘を続ける。
B「××の理解が違うんじゃないの?」
A「そんな方法論なんかに興味はない!」
B「では、このケースの問題について、どうすればいいかな」
A 「xxでやるんだ」
B「え?××とか、方法論なんかに興味ないんじゃないの?」
A「実は興味あるよ。」
B「…ごめん、この会議は何だったんだ…すっげー疲れた…」

つまり、Aさんは自分の宣言と言動が不一致なのだ。 抽象度(メタレベル)が違うメッセージにおいて、抽象度が高い会話と、具体的な会話のメッセージが食い違っているから、Bさんは混乱してしまうのだ。 Bさんは、会話が理解ができず、理解のため質問や指摘したところで、Aさんは激しい口調で はぐらかしてしまうため、健全な議論が成り立たない。

それ以外にも、こんな例もある。

A 「報告や相談が足りない!」
B 「◯◯はどうする?(相談)」
A 「自分で考えられないのか!」
B 「えっ…?」
この場合、どうして欲しいのか、質問することが解になるかもしれない:
B「どうして欲しいの?」
A「あなたなら、どうして欲しい?」

のように、要望しておきながら、自分の気持ちを言わない、というのは基本的なパターンで、Bさんは、よくわからない苦しい状態にはまり込みやすい。

メッセージとメタメッセージの矛盾が引き起こす問題

このような状況は、ダブルバインドになっている。定義と内容を見てみよう(Wikipediaより)。

ダブルバインド(Double bind)とは、ある人が、メッセージとメタメッセージが矛盾するコミュニケーション状況におかれること。

つまり、楽しい内容のメッセージを会話で伝えているときに、悲しい表情やトーン等のメッセージを伝えるためのメッセージ(=メタメッセージ)を送ると、受け手は混乱する。 先の例だと、メタメッセージと、矛盾した個別のメッセージをくり返し、受け手は混乱する。 どのように判断していいのか、わからなくなるからだ。 続けていると、自分が自分でなくなるような暗い気持ちになってくる。

理論の内容

  1. 2人以上の人間の間で
  2. 繰り返し経験され
  3. 最初に否定的な命令=メッセージが出され
  4. 次にそれとは矛盾する第二の否定的な命令=メタメッセージが、異なる水準で出される
  5. そして第三の命令はその矛盾する事態から逃げ出してはならないというものであり
  6. ついにこのような矛盾した形世界が成立しているとして全体をみるようになる

という状態をいう。

プレッシャーを与えた上で、メッセージとメタメッセージが異なるダブルバインドをしかけられると、追いつめられたような極めて苦しい心理状況になる。 通常の健康的な思考ができなくなるため、簡単にコントロールされやすい状況に陥ってしまうのだ。

このような症状が現れる。

  • 言葉に表されていない意味にばかり偏執する(妄想型)
  • 言葉の文字通りの意味にしか反応しなくなる(破瓜型)
  • コミュニケーションそのものから逃避する(緊張型)

Bさんは、コミュニケーションをとることを回避するようになったようだ。

自分が持つ盲点や矛盾は自分では気がつかないため、基本的に言動と行動が一致しないことは、仕方ないことと言えよう。 たとえば、目的の大切さを述べながら、目的を大切にできていない、とかもあるだろう。 ただ、立場が異なる場合や、その矛盾点を指摘した瞬間、激しく怒りだすなど健康的ではないことが続くと深刻だ。

ダブルバインド状態に深くおちいると、深い問題を引き起こす可能性が高い。 自分が発したメッセージが、適切なフィードバックが得られないし、自らの行動や思考が停止してしまう傾向にある。

Aさんは、(無意識か意識的かは不明だが、事実として)このような矛盾したメッセージを送り続け、相手をコントロールしやすい状況に持ち込むことができる。 他方、ダブルバインドを仕掛けられた Bさんは、灰色で苦しい日々を送ることになってしまうのだ。 まるで、自分が自分ではないような、とても苦しい気持ちである。

解決にむけて

Aさんにどのような指摘をしても効果がない、もしくは、時間と体力を消費する。 なぜならば、Aさんは「(Bは)なってない」「できないやつだ」などのように、見下した態度で謙虚さを失い、Bさんに対して尊敬せず、信頼していない状態だ。 このような状況に陥ると、BさんのメッセージをAさんは受け取らない。

さらに、この状況下において、Bさんも影響を受け、コミュニケーションが停止し、メッセージを受け取りにくい状態になっている。 お互いの成長が困難になっている。

しかし、このような状況においても、ビジネスの場面において、効果的な結果を出す必要がある。

ダブルバインドの構造を知る

チームで作業しているときに「メッセージとメタメッセージが矛盾するコミュニケーション状況におかれる」ダブルバインドが発生している可能性を知ることは有用だ。 このようなダブルバインド状態では、あたかも自分が自分ではないような喪失感を伴った感覚になり、健全ではなくなる。

ただし、ダブルバインドは成長のキッカケになることさえある。 たとえば、師弟関係のあるときに、その師匠のメッセージは理解できない場合がある。 もしくは、属している文化が違うと、統一的なメッセージであるにも関わらず、それを矛盾なく受け取ることができない。 そのため、ダブルバインド状況であると認識してしまう可能性がある。

ただ、上記の状態も含め、ダブルバインドになれば、健全で対等なコミュニケーションは難しくなりがちだ。 もし可能であれば、チームにおいてダブルバインドについて共通理解を得る機会を設けることもひとつだろう。

矛盾している事項を指摘する

矛盾を感じている事柄について、指摘や質問する。

しかしながら、多くの場合において、隠れたメッセージが「相手をコントロール下に置きたい」であるため、その指摘や質問について真摯に対応され、回答がとられることは少ない。 たとえば、「そんなこともわからないのか」などの見下しから始まり、激怒などの反応を引き出すことさえ多くある。 真摯に応答していれば、相手はダブルバインドから脱して、対等な立場になってしまうからだ。

そのため、指摘が更なる混乱を導くことを理解した上で、体力と時間、優先順位などを考え、矛盾を指摘しつづけることもひとつの手だ。

距離を置いて、健康な状態を維持する

このようなコミュニケーションを続けるためには、体力と時間が必要だ。 場合によっては疲労し健康が損なわれる場合さえある。

自分の健康が保てる範囲を超えていれば、距離を置き、修復を待つことが長期的な視点での効果を得られる選択しうる方法だ。 基本的に、見下し、見下されるような関係性では、議論しても時間の無駄になる。

一方でダブルバインドを仕掛ける方は、自分のコントロール配下に置きたいため、「逃げてはならない」とか「避けられない」などをはじめとする強い束縛を望みがちだ。 距離を置く、という選択をとることが、まずは自分の健康を守ることになる。 時間は限られている。 無駄な時間を過ごすことはない。

自分の感情に素直なままでいる

もしその体力があるのなら、素直な自分の感情に耳を澄ませ、その感情に従うようにする。 批判にさらされながらも素直なままでいるのは体力がいる。 このマイペースで、自分の心のままでいられるのであれば、相手にとっても等しく成長の機会を得られる。

結果

ダブルバインド状態はプライドや個人の思いなどと深くつながりやすいため修復や成長に時間がかかる場合が多い。 健康的な状態を確保した上で、効果的なアウトプットを出すなど、営みを続けていくしかない。 のんびりいこう。

関連情報

チームの育て方(5):花を咲かせよう

喜納昌吉&チャンプルーズのアルバムを聞いていて、この投稿を書いてみた。「花〜すべての人の心に花を〜」や「ニライ カナイ ~遥かなる国~ 」が好きだ。


ビジョナリー・カンパニー 2 - 飛躍の法則』によると

「適切な人をバスに乗せ、不適切な人をバスから降ろし、その後にどこに向かうべきかを決める。」

むろん、目的や期間、スコープなどを決めてプロジェクトとして切り出し、終わらせるけれど、それはそんなに難しい問題ではない。 それ以外の部分が、大切でかつ、大きく効いてくる。 コミュニティやビジネスなどの組織やチームでは、目的やビジョンを挙げて進むことより、誰とバスに乗るのかが、とても大切なのだ。

では、どんな人とバスに乗ればいいのだろうか。今まで『チームの育て方』で、述べてきた通りだ。HRT (謙虚・尊敬・信頼)の原則を身につけており、「エゴ」のコントロールができる人材は、その候補になってくる。ビジョナリー・カンパニー 2 - 飛躍の法則で紹介されている「個人としての謙虚さと職業人としての意思の強さという矛盾した性格をあわせもっている」第五水準リーダーの候補として貴重な存在だ。

また同時に誰をバスから降ろすのかのも、話題になってくる。 現実問題として、そりが合わない、能力がない、HRTがない、エゴが強すぎる…など、様々な人が存在する。 ただ、そのような人はどこにでもいる。

その人が、自然にご縁がなくなるのは仕方ないことではある。 しかし、ご縁がある以上、ご縁があった人を切るのではなく、花を咲かせたい。つまり、置かれた場所で咲きなさいなのだと思う。 極めて難しくて面白い課題である。

では、どのように花を咲かせればいいのか。 その人を生かせばいい。 言葉遊びに聞こえるかもしれないけれど、まずは心がけから始まる。

人を生かすためには、人は人なりである。 実は、その人は人なりに気がつくためにも、エゴは邪魔するし、謙虚・尊敬・信頼も大切になってくる。 素の自分でいた方が、気がつきやすい。

まずは、姿勢を良くして、深呼吸してみよう。


今後、具体的にどうすればいいのか。少しずつ紹介していきたい。

Oさんから、質問された「なぜ、関わった人を大切にし、幸せにしようとするのですか」。 それは生きているからだ。せっかく生きているのに、もったいない。 そして、力不足で もがくばかりだけれど、それは私の仕事なのだと思う。

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参考文献

チームの育て方(4):フィードバックの受け方

今回は、ある企業や組織などのチームにおいて、何らかのアウトプットを出し、フィードバックを受ける側に着目し、三つの方法を紹介する。 チームの育て方(2):アウトプットの育て方(レビューやコメントなどフィードバックの方法) - ari's worldに続くフィードバック編の第2回である。

今回の記事において、読みやすさの観点から、フィードバックを受ける人を行為者と、フィードバックする人を支援者あと表現する。

  • 活動を行いアウトプットを作り、フィードバックを受ける人を行為者と呼ぶ。
  • なんらかのアウトプットや活動に対して、フィードバックを与える人を支援者と呼ぶ。

ゲート設定

プロジェクトやコミュニティなどで、行為者は、なんらかの作業やアウトプットをしている。

品質や内容に不備があると、そのアウトプットの効果や価値が落ちてしまう。

  • 品質や効果などの価値を上げるために、ピア・レビューなどのフィードバックを活用できる。
  • 品質や価値を上げるためのトレードオフとして、納期やコストが増え、スピードなどが遅くなる場合がある。
  • 支援者が、フィードバックのタイミングを作ると、行為者が主体的に関わるチャンスを減らしてしまう。行為者がフィードバックを望まないのに、フィードバックされると迷惑に感じることさえある。
  • 支援者が、強制的にフィードバックをし続けると、行為者は支援者に依存しがちだ。

それゆえ、行為者および支援者は、アウトプットに向かうプロセスにおいてゲートを設定し、そこでゲートを通過するために適切なフィードバックを行う。

たとえば、ある企業でソフトウェアの開発・保守などを行う場合、ビジネス企画チームとソフトウェア開発チームの二つのチームに着目した例を示す(監査や承認のためのゲートは省いた):

  1. ビジネス企画を始めた段階と、チケットに登録するときの開発チーム向けゲート(オプション)
  2. ソフトウェア開発者が、チケットがアサインされたとき、その解釈や対応策についての開発チームおよびビジネス企画者向けゲート。どのようなシステムテストを想定しているか、見積などの内容を含む。
  3. ソフトウェア開発担当者によるソースコードと動作についての開発チーム内部でのゲート
  4. ソフトウェア開発担当者と運用者によるリリースについてのビジネス企画者に向けてのゲート

この場合、行為者がゲートを通過させる責務を負った。 営業活動のための発表資料でも、構想段階と発表資料、発表内容など、状況に応じて相談もしくはフィードバックなどのゲートを設定する。ゲートは、通過、条件付き通過、不通などを決める。 このように適切なフィードバックを得られるように状況に応じた調整する。

組織やコミュニティ、そのアウトプットの内容に応じた、ふさわしい ゲートの強度を設定する。 重要度や複雑度など様々な状況に応じて、ゲートの増減や、フィードバック強度の加減などのチューニングが行われる。 ゲートを増やし強度を上げると、スピードが落ちるので、必要にして十分な強度を維持することがチームを健全に継続するために必要である。

フィードバックを受ける行為者自らが、主体的にプロセスを進めるように設定することが望ましい。 行為者の主体性を維持するために、いくつかのファシリテートを行うことが多い。 たとえば、支援者も、一緒にゲートを通過させるよう協力的に振る舞うことだ。

その結果、必要に応じた負荷を伴った品質や効果を高めることができる。 ゲートを通過した成果物は、その組織やコミュニティにおける代表する意見として採用することができる。

叩かれるより、種探し

チームで作業について、コメントやレビュー等のフードバックを受ける機会がある。

支援者が攻撃的な意図はないとしても、行為者はコメントやレビューなどのフィードバックをされると攻撃だと受け取られがちだ。 その結果、行為者はおびえ、無視し、怒るなど、非効果的な感情になることがある。

行為者は、建設的な批判と攻撃を区別することは、論理的にも感情的にも困難なことが多い。 なぜならば、支援者は権力や立場がひとつ上がり、行為者は、相対的に支配され、強制されることになるからだ。 たとえば、親が子どもに注意する際、あきらかに親が権力や立場が高くなる傾向にあるからだ^1。 支援者が「それは攻撃ではない」と主張したとしても、それの真偽や妥当性はわからない。

行為者は、いったん冷静になり攻撃と受け取りやすい傾向を理解した上で、フィードバックされた意見が、攻撃かどうかを判断する。 特に「事実かどうか」であるとか「指摘事項がどのような改善をもたらすのか」などのような判断基準を通す。 もし攻撃に感じたとしても、もし許容範囲であれば、その攻撃性を受け入れればよい。

ただし、攻撃性が許容範囲を超えるような場合は感情的になってしまう。 その攻撃を受けたと感じたときに、怒ったり無視したりすると、効果的なコミュニケーションになりにくく、アウトプットの価値があがりにくくなる。 そのようなときは、支援者に、意図を質問することや、攻撃的と感じたことをフィードバックすることが望ましい。

その際、支援者のプライドが刺激しにくくし、健康的なコミュニケーションを実現するため、行為者は元気な子どものように振る舞い、攻撃に感じたことをやんわり伝える。 たとえば「そんなに激しく言われると、おろおろしちゃう。」とか「おおっ、なんか来ましたね」とか、自分の言葉で表現できるとそれが突破口になりやすい。

もしかすると支援者は「攻撃と批判を分けるべき」とか「攻撃しているつもりはいない」のような指導をされるかもしれない。 具体例な事実を示しながら、意図を確認したり「この部分が攻撃されるように感じたので、このように改善してほしい」と伝えよう。

それゆえ、行為者は攻撃かどうかを冷静に判断し、もし受け入れられない攻撃に感じた場合は、1. 明るい元気な子どものように振る舞いながら、2. 攻撃に感じたことを伝える。

ただし、本来の目的は、アウトプットなり価値や品質を向上させることであるため、このような議論はコンパクトにし、タイミングを図ることを忘れてはならない。

その結果、攻撃的な状態というフィルターを通じてではなく、アウトプットの価値をあげやすくなる。 なお、あまりに叩き切るような攻撃的な支援者については、いったん距離を置くようにするのも一つの手だ。

牛のように歩く(選択と昇華の戦略)

フィードバックをするためには、時間を割いて、それなりに時間が必要になる。 第三者からチェックすることは、視点が増え、改善することが多くある。

しかしながら、受けたフィードバックに対応することによって、品質や価値が高まるとは限らず、逆に低下することさえある。 場合によっては、論理的な一貫性がなくなるなど全体のストーリが壊れるなどの問題が発生することさえあるのだ。 たとえば、支援者のAさんからのフィードバックを反映した後で、別の支援者である上司の方針が全く異なり、すべてを作り直すなどはよくある。 そのように行為者がフィードバックに対応することは、リスクやコストをはらんでいる。

それゆえ、フィードバックについての文脈の理解と戦略に基づいて対応する。

どのようなフィードバックでも適切かどうかは不明だ。

  1. 支援者についてなどの前提条件や文脈の確認
    • その人の経験や背景を知る。
    • 知識やスキルや、モチベーションを推定する。状況を利用して、何らかのことをしようとしているか。
    • 師弟関係など無視することが困難な場合から、何らかの売り込みが予想し対応しない可能性などのもっともらしさ判断の前提になる。
  2. フィードバック内容の把握と理解
    • 行為者がフィードバックを受け取るとき、支援者に感謝の意を伝える。
    • 大量のフィードバックがあるときは、指摘事項をまとめる。
    • 小さめのタイポなどや一見して妥当な内容は、その場で修正してしまうのも手だ(2分以内かどうかを判断基準としている)。
    • 指摘事項が不明瞭、もしくは、意図や理由が不明なときは確認する。
  3. 戦略と仕様解の検討
    • 本来の意図や目的を改めて確認する。よいフィードバックであれば、その意図や目的を修正することも視野に入れる。
    • 指摘事項が有効か、重要かどうか、対応可能な内容かを判断する。
    • 行為者の意図と、支援者の指摘事項が一致しない場合、確認や未対応などの判断をする。双方の意図を取り入れるような修正も検討する。
    • 限られた時間の中で有効に変更するため、対応にどの程度の時間が必要とされるか。
    • 全体のストーリとの関係性を確かめ、妥当ではない場合は、確認するか、対応しない等の判断をする。
  4. 戦略に基づいて対応し、再びアウトプットする。
    • 改善されているか、もう一度確認してからアウトプットする。
    • フィードバックしてくれた支援者に感謝の意を述べることをお忘れなく。
    • 必要に応じて、再びフィードバックを得る。

その結果、フィードバックを活かし、アウトプットの質や価値が向上させる。

謝辞

フィードバックの受け方があることをフィードバックしてくださったT氏に感謝します。

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Image : http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Field_in_Kärkölä.jpg

チームの育て方 (3):プライドと自信

チームで仕事をしているとき、殺伐とし崩壊することがある。 逆に、タフな状況ながら、一体感を感じ、成果を出しやすいチームもある。 一体、何が違うのであろうか。

複数のメンバーからなるチームをどうやって育てるのか、チームと一緒に自分が育つのかを考えてみたい。

疲弊させるアクション

チームを壊すアクションとしては、どのようなものがあるのだろうか。 たとえば、こんなことは、チームを疲弊させる:

  1. メンバーをうらやましがり、足を引っ張る

    あるメンバーがよりよい状態にいるとき、うらやましがる。 そのメンバーのアウトプットについてレビューやフィードバックでは、徹底的に批判し、否定し続ける。 また、そのメンバーの友人や知人に対し、ネガティブな印象を流す。 その結果、相対的に自分の評価があがる。

    ただし、他人の批判を繰り返すことは、自分自身の評価も巻き込まれることになる。

  2. 主体的に動く人を、徹底的に否定する

    メンバーがリーダーシップを発揮している人は、自分の影響力が弱まるため、その活動や提案には「興味がない」「関係ない」「まったくなっていない」など否定的なコメントを返し、さっぱり会話を終了させる。 さらに、そのメンバーの能力不足を厳しく指摘することも忘れてはならない。 強力なのは、自分の欠点をメンバーの欠点として責め立てると、相手は反論しにくくなる。 その結果、主体的に動く人は距離を置くようになる。

    ただし、自分に関係のないところで活動が行われることになる。

  3. 自分の成果や立場を極めて大切にする

    チームで聞いた参考になる話しや成果は、許可を得ず、自分のこととしてTwitterなどのSNSに公開する。 また、自分の目的実現や評価向上のために、チームでの取り組みを、あくまで自分の取り組みとする。

    自分の立場を保身もしくは上げるためにチーム内の政治に力点を置くと、メンバーは安心してチームに貢献し、進めることが困難になる。

    ただし、メンバーはチームへの情報公開や議論を躊躇し、距離を置くようになる。

このように、自分のプライドや立場(エゴ)を大切にすると、チームは疲弊し、健全なコミュニケーションが成り立ちにくくなる。

疲弊する理由

Team Geek ―Googleのギークたちはいかにしてチームを作るのかには、このように紹介されていた。

あらゆる人間関係の衝突は、謙虚・尊敬・信頼の欠如によるものだ。

経験的に、人間関係の衝突が、チームで作業する上でボトルネックになる。 衝突してから、和解するためのプロセスを踏むことも大切だけれども、衝突したまま対立し、それらが改善せずに崩壊した事例を多く見かける。 そのため「衝突が必要である」と考えるのは、非効率ではなかろうか。

特に、内向き(自分のプライドやエゴ、チーム内政治)などに関心があると、チームとして成果をあげることを阻害する。

エゴが強いメンバーはどこにでもいるとは言え、利益や結果を得るためにプロジェクトを適切に推進したいと願っているメンバーも、ついエゴが刺激されてしまう。 エゴやプライドが強い人と接していると、他のメンバーも、どうしても同調し防御的になり、自己顕示欲が強い状況に陥りがちである。

その結果、プライドや立場を保とうとする態度がチーム全体で伝播し、そのために時間や労力が浪費されることになる。

注釈:ブライドと自信という言葉について

エゴは、心理学や哲学をはじめ様々なところで議論され定義されているが、ここでは自分の評価やプライド、立場を大切にする態度とする。

本記事において、プライドと自信を使い分けているので理解していただきたい。

  1. プライド(自尊心)とは、自分を優秀だと思う気持ちを大切にし、尊大に構え、自分の品位を保とうとすることである。他者評価で傷ついたり、上下しやすいもの。
  2. 自信とは、自分の才能や価値を信じることである。他者評価に揺らぐことのすくないもの。「絶対的な自信」という表現が近いかもしれない。

チームを育て上げるアクション

チームを疲弊させるアクションの反対が、チームを育て上げることになる。 あくまで相対的なものであり、努力し、心がけるものだ。

  1. 確実な自信

    人からの評価や基準はたくさんあり、他の人の行動が気になってしまう。 そのようなときは、心の中でひっそりと自分の才能や価値を信じる自信をしっかり持とう。 たとえば、どんなところでも生きていけると考え、自分の才能や価値を作り出すためには、それなりの努力や取り組みが必要である。

    自信がないと、ついつい不安になり、自分を守りたくなってしまう。 隣の芝生が青く見えるように、他人が良い状態にいるように感じ、うらやましくなり、足を引っ張りたくなる。 あくまで他人からの評価は、他人の仕事だ。

    自信を持ったの結果、自然体でゆったりと過ごせるようになる。 ただし、このような態度を持っていない人からは、理解できない不思議な態度に思える。

  2. 良いところの発掘

    一緒にいる人の良さや、アウトプットの良さは、よくわからない。 ついつい、欠点や悪いところに目がいってしまう。 評価や慣習などの文化によって、その悪いところが決まってしまう。

    否定や非難は、誰にでもできる。 いくら非難や否定しても、かたくなになって、なかなか改善しない。 チームや人は、育ちにくいのだ。

    そこで、人やアウトプットの良いところを探すようにしよう。 同じ視線に立って、どのような点が良いのか、どのような良い効果があるのかを地道にさがそう。

    これは、言葉で言うほど、簡単なことではない。 どうしようもないと評価されていた人を、自分の部署に引き取ったことがある。 そのときの業務から考えると、プライドも高く、ミスも多く、あまり成果を出していなかった。 しかしながら、組織側とそのメンバーの教育に数年を費やしたが、 とらわれない発想や問題提起力はすばらしく、そのプロダクトやサービスの品質を向上させることに大きく寄与した。

    必ず良い点はある。絶対にだ。 へそを曲げ、仕事をしないように見えていても、それには妥当な理由があるのだ。 良いところを発見し、それを一緒に育てる喜びは代え難い貴重なものだ。

    回り道かもしれないけれど、それが一番早い。

  3. 外に関心

    チームの内部に関心があると、その関心を充たすために、プライドや政治などの関心が出てきてしまう。 「何をしたいのか」とか「どのような選択があるのか」とか問うことも内省し、成長するときに大切なことだ。 しかし、ネガティブなフィードバックが強すぎると、出力が低下する。

    そのようなときは、社会や外部にある問題に着目し、どのように解決するかに関心を示す。 プロジェクトであれば、そのプロジェクトが対象にしている問題や理由を考えよう。 チーム内や組織内への関心が薄まり、チームがその問題をという関係性が強化される。

    殺伐とさせるようなアクションにも関わらず、疲弊に対抗するような体力や器を持ち、外に関心を向けチームに貢献していると、だんだんとチームが健全になっていくことが多い。

チームを壊すアクションについての対策

実際のところ、エゴレス的な振る舞いや文化は壊されやすい。 そして、経験上、そのような文化を壊すようなメンバーはどこにでもいる。

やはりエゴレス的な文化を破壊するメンバーにも良いところがあり、文化を守りながら、そのメンバーの力を活かすような取り組みが必要になってくる。 チームを育てる価値を説明しながらも、ひとまず:

  • 役割やスコープを明確にし、その範囲で活動していただく。チームが成り立たないぐらい破壊的な状況であれば、独立した活動で貢献していただく。
  • 高いハードルや問いを投げかけて、存分に動いていただく。プライドや立場を保全するために真剣であることが多くある。
  • リーダーもしくはマネージャなどが、その人の対応担当として、メールの返信や苦情の受け口になる。

チームを育て上げる原則

Team Geekで紹介されているように謙虚(H)・尊敬(R)・信頼(T)のHRT(ハートと読む)の原則に価値を置くことにより、無用な衝突を避け、成果を上げやすい文化を育てる。

  1. 謙虚(Humility): 世界の中心は君ではない。君は全知全能ではないし、絶対に正しいわけでもない。常に自分を改善していこう。
  2. 尊敬(Respect): 一緒に働く人のことを心から思いやろう。相手を 1 人の人間として扱い、その能力や功績を高く評価しよう。
  3. 信頼(Trust): 自分以外の人は有能であり、正しいことをすると信じよう。そうすれば、仕事を任せることができる。

自信を持つことと、良いところの発掘外に関心を持つことは、それぞれが独立しておらず、相乗効果を発揮する。 同時に、謙虚(H)・尊敬(R)・信頼(T)のHRT(ハートと読む)の原則に価値をおくことは、チームを成長させ、成果を出すことができる前提になる。

このような境地に到達することは困難ではある。しかし、少しずつ努力し、そんな人間になりたい。

関連記事

謝辞

  • 自信とプライドについては、私の師匠および友人のひとりである故諏訪氏から学んだ。
  • 問題提起をしてくれた友人に、このようなブログを書く必然性を作ってくれたことについて感謝する。
  • 「外に関心」については、私の師匠および友人のひとりであるY氏、「貢献」については、私の師匠および友人のひとりであるH氏から学んだ。そのほか様々な方々から、深く学び、かつ、サポートしてくださっている。実践と成果を目のあたりにし感動することがしばしばある。学んだことは奥深く、そして、私の身に少しずつ染み込んでいる気がする。感謝しても、感謝しきれない気がする。

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チームの育て方(2):アウトプットの育て方(レビューやコメントなどフィードバックする方法)

複数のメンバーで、プロジェクトや業務を推進していることを例にとってみよう。 そのときに、様々なレビューやコメントなどの機会にフィードバックがされている。 そのレビューやコメントなどのフィードバックが効率的であると、高いパフォーマンスを発揮する。

なお、レビューの一種である正式なインスペクションやウォークスルーなどは、今回のスコープに含まない(もしくは、後で書く)。 本記事においては、当事者のアウトプットに対して、何らかの意見や提案を行うことをフィードバックとし、コメントやレビューなど同列に扱っている。

適切ではないフィードバックは、効果が少ない

チームで作業をしているプロジェクトにおいて、適切ではないフィードバックを続けると、チームとしてのパフォーマンスが大幅に落ちてしまうのだ。

たとえば、こんな感じだ:

  • メンバーの作成したドラフト文書に掲載されていた写真が趣味に合わなかったらしく、「ここはダメだ!」と机を叩くように指摘する。
  • 手があいたので発表資料のドラフトを作ったところ、事前に相談がなく着手したことが性格の悪さと能力の低さについて半日近く拘束して指摘する。
  • 本番直前の準備中にテンパっているようなときに、本番には関係のない質問をし、その回答に配慮が感じられないことを激しく指摘する。いかに傷ついたかを説明し「共感などできない!」と至らなさを指摘する。
  • 共有フォルダにある作業中のファイルを見つけ出し、そのファイルに自分の意図と違っていることについて何度も何度も(使い勝手の改善などではなく)不満を伝え続ける。

いろいろなフィードバックをいただくことは、とてもありがたいと言えよう。 修正し、より良い状態にできるからだ。

しかしながら、上から目線でフィードバックを返すことは非効果的であることが多い。 たとえ、適切な内容をフィードバックしたとしても、そのような態度であれば、感情的になりやすく、プロジェクトはスムーズに進まない。

勘違いするのは仕方のないし、それを適切に修正できる機会を得られるのはプロジェクトとしても有用であるにも関わらず、チームメンバーが萎縮しやすくなり、萎縮しないとしても、発言者に対してフィードバックが遅くなる。

友人や編集者、コンサルタント、教師、コーチは、その時点での私の問題とはまったくかけ離れた提案や申し出をする場合が多い。そうした人々をできるだけ穏やかに無視しても、勝手に私を助けようと決めた人は、苛立たしげな口調でこんなことを言う場合が多い。自分は役に立とうとしているだけなのに、支援を受け入れようとしないあなたはどこか間違っている、と。[シャイン]

フィードバックと権力との関係

「支援者の役割を演じると、たちまち地位と権力を得る。[シャイン]」とあるように、フィードバックする側は、立場と権力が高くなりがちだ。 そのことを利用し、自分の自己顕示欲を充たすためにフィードバックを行うと、そこには健全な関係性が消失し、チームが壊れやすくなる。

一方的な関係性を終わらせるために受けたフィードバックが役に立たないことを伝えることも、同じようなジレンマを持っている。

それゆえ、まずはフィードバックする支援者の重要さや大切さを認識することがスタートになる。 また、効果的でないフィードバックを受けたときも、より効果的にするため、チームとして取り組むことになる。

レビューやコメントなどフィードバックの仕方

とても役に立つフィードバックをされる方々がいる。 その方々は、どのようにフィードバックを返しているのかについても観察してみた。

ポイントは、状況やレベルに合わせた適切なコミュニケーションをしている。レビューやコメントなどのフィードバックをするとき、以下のようにすると効果的だ。

  1. 経験と実績の積み上げ

    経験のないコメントは、薄っぺらで説得力のないものになりがちだ。 教科書の朗読を聞いているような気分になってしまう。 単純な知識であれば、インターネットで検索すれば出てくる。

    豊富な経験を積んだ人からの話しは、一般的でなくても引き込まれることが多い。 じっくりと経験を積もう。

  2. よい人間関係

    険悪な雰囲気では、効果的に意見を伝えにくくなってしまう。 目的は、その人の欠点を指摘するのではなく、あくまで良い成果物を得ることだ。

    イソップ寓話『北風と太陽』の北風のように、いくら北風が吹いてもコートを着るように防御されるだけだ。 それよりも太陽のようにリラックスしたほうが効果的だ。

    ただし、「共感や尊敬をするようにした(=してやった)」とすると、その部分が鼻について逆に微妙なので、その人に興味をもつぐらいが自然でよい。 たいていの場合、事実を伝えることは批判的に感じられやすい。 一緒に問題を解決するような公平で平等な関係を維持することが効果的であることが多い。 正しい指摘ほど効果的に伝えよう。

  3. 共通言語の取得

    価値あるアウトプットをするためには同じような問題意識や文脈の理解があると、より効果的なコミュニケーションが実現できる。 同じ書籍を読んだり、辞書やパターンを作るなど、共通言語を獲得しよう。

  4. 問題、背景や状況の理解

    解こうとしている問題や状況を理解していない段階でのコメントは双方にとって効率的ではない。

    上から目線で、激しくとんちんかんな批判をするほど滑稽なことはない。 まずは問題の本質や理由、その背景を理解し、双方で力を合わせて問題を解決に向けるように考えると効率がよい。 問題や状況が読み取れないときは、素直に質問すればよい。

  5. 大切なポイントから指摘

    品質や納期などの状況によるが、大切な点でないと、無駄な時間を過ごしてしまう。 フィードバックをもらう側も、すべての点に対して対応できない場合もある。

    大切で重要なポイントから、指摘することによって限られた時間を有効に使える。 タイプミスやスペルミスのような小さな間違いは、まとめて指摘しておく。 逆に、完璧を要求されるような場合でなければ、ポイントではないことについては、指摘しないことも視野に入れよう。

  6. 定義や言いたいことと具体例

    長くて冗長な説明は、聞く人に苦難を強いる。 具体例だけでもわかりにくいし、定義や言いたいことだけを伝えてもわかりにくい。

    逆に知識が共有されていないときは、定義や説明だけしても、言いたいことは伝わらない。

    そこで、明確な定義など言いたいことを示し、次に具体例で説明し、最後に言いたいことを簡潔に示す。 たとえば、フィードバックを例にとると……フィードバックとは、何らかのアウトプットに応じて、適切な情報を付加して、インプットとすること。たとえば、ある成果物について気づいたことを教えることも、フィードバックになる。このようにフィードバックとは、何らかのアウトプットに対して情報を返すことだ……のように、具体例をサンドイッチのように包むことだ。

  7. 当事者の尊重

    あくまで問題を抱え、解決できるのは当事者であって、コメントやフィードバックを与えている人ではない。 それだけ知っている事柄であったとしても、それは当事者の問題ではない。 あくまで、当事者が当事者として取り組むべきことである。

    当事者の意見を尊重するために、コメントは質問の形を取ることも多い。 また、コメントやフィードバックが反映されなかったとしても、おおらかな気持ちにする。

基本的なスキルとして

多くの場合は、自立的に動いているが、ビジネスやコミュニティ、様々な状況で、コメントやフィードバックを行う機会がある。 その基本的なスキルとして、的確なフィードバックをできるよう、チームとして成長していきたい。

参考文献

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Image : http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Field_in_Kärkölä.jpg


追記

スポーツは、観戦するより、実際にやってみることが好きだ。 たとえば、野球をやってみると、ボールを投げることですら、難しいことがわかる。 走ってみると、速く走ることは難しいことがわかる。 職人も同じだ。たとえば、職人は簡単そうにやっているけれど、餅を切る、という誰でもできそうなことも、試してみると力も技術も必要なことがわかる。 しかし、無責任で攻撃的な批判や批評によって、その実施者の良さを削ぎ、最終的には自分自身の首を絞めているようにも見える。 実施者にとって、適切なフィードバックを選び取ることは難しい。

チームの育て方(1) :新しい知識の砂場(サンドボックス)

チームの作り方(1) :新しい知識の砂場(サンドボックス

新しい知識を導入する際の問題点

新しい技術や方法論などの知識を、関わっているプロジェクトや業務に導入することは、様々なメリットがあることが多い。 しかしながら、チームで作業している際、その知識を導入することによって、問題が発生することがある。

  1. そぐわない知識による問題発生

    適用しているプロジェクトの状況とは、特性が合致しない。 たとえば、既存のビジネスを分析するためにふさわしいツールを、企画段階の初期に投入しようとするため、具体的な企画ができない。 状況にそぐわない方法論や技術などの知識を導入しても、問題が解決しないだけでなく、あらたな問題を生み出すことがある。

  2. 導入コストの発生

    新しい技術や方法論の導入には、学習のための時間などの工数を要する。 そのための習得している間は、パフォーマンスが一時的に下がる。

  3. 乏しい経験によるムダの発生

    新しい知識は、そもそも経験が少なく、勘所や回避方法などがない。 そのような知識をプロジェクトに導入しようとしても、プロジェクトそのものが進まなくなり、失敗してしまう。

もしかして:アーリーアダプターとプロジェクト

社会学者エベレット・M・ロジャーズの『イノベーション普及学』で、イノベーションがどのように組織に普及するかを明らかにした。 ロジャーズによると(以下、情報マネジメント用語辞典:アーリーアダプター(あーりーあだぷたー) - ITmedia エンタープライズより)イノベーションの普及は、

  1. 冒険的で、最初にイノベーションを採用するイノベータ(革新的採用者)
  2. 自ら情報を集め、判断を行う。マジョリティから尊敬を受けるアーリー・アダプター(初期採用者)
  3. 比較的身長で、初期最初に相談するなどして追随的な採用活動を行うアーリー・マジョリティ(初期多数採用者)
  4. 疑り深く、世の中の普及状況を見て模倣的に採用するレイト・マジョリティ(後期多数採用者)
  5. 最も保守的・伝統的で、最後に採用するラガード(採用遅滞者)

のように整理されている。

アーリー・アダプターを目指し、マジョリティから尊敬を受けること目的としている人は、その知識が採用されていないプロジェクトと衝突が発生する。 しかしながら、何らかの方法論の導入を目的にすることが、手段の目的化しており、有効な成果を生み出すことが困難になっている。

つまり、現場やプロジェクトを視点では、その方法論や技術などの知識は役に立たず、イノベーションではなく単なるコストやムダになってしまうことがある。

もしかして:自己顕示欲のための知恵

プロジェクトの企画段階において、社会的な関心や問題に話題が移ったとしても、「それは××だ」とか「おれ、知っていた」と自分物語を熱心に話し、会議が横道にそれてしまいがちなメンバーがいる。

「自分のためではなく、チームで…」とお願いしても、否定される。なぜなら、そのメンバーの自己顕示欲が満たせなると考えれば、その人に取ってみれば回避すべきことになるのだろう。

また、メンバーに対する批判や見下しを伴うと、その知識がどれだけ有用であったとしてもチームメンバーのモチベーションが低下し、成果物への関心が薄れてしまいがちだ。

その人の自己顕示欲を満たされないと、その人への対応に追われ、チームの進捗を悪化させることになってしまう。

その結果、新しい技術や方法論などの知恵を導入することが手段の目的化し、プロジェクトが遅延し、場合によっては消滅する。

解決しようとしたけれど

どんなに優れた方法論であったとしても、状況にあっていなければ、役に立たないどころか有害でさえある、ということだ。 新しい方法論や技術の導入には、コストがかかることを認めないと、プロジェクトの遅延や失敗に結びついてしまう。

手段の目的化のため、プロジェクトが進んでいかないため、この問題を回避するためには、いくつかの対策がある。

  • 議論や質問>平行線(お花畑)

    ある技術や方法論などの知識が正しく、正義であると考えていると、あらゆる問題が解決できるように信じてしまう。 たとえ、その知識にどのような効果があるか、なぜ、それを採用しなければならないのか、どれだけの工数が必要になるか質問しても、書籍で紹介されている良いところしか見えていない人を説得するのは難しい。 たとえば、論理的に説明したとしても、その知識を信じている人の自尊心が満たされない、というクレームを付けられるなど健全な議論が成り立たない。

  • タイムボックス>侵略されるタイムボックス

    時間を区切り、その中で議論や作業を進めるタイムボックスという手法がある。 タイムボックスを決めたとしても、次のタイムボックスも、その議論が大切だ、という説得になるため、その手法の大切さを議論する。もしくは、タイムボックスを決めるための議論が終わらず、タイムボックスが成立しなくなってしまう。

このような調査のための工数が無視できなくなり、適切な運用ができず、プロジェクトも頓挫している。 いっこうに問題は改善しない。

解決策(新しい知識の砂場/サンドボックス

それゆえ、プロジェクトは、成果を出すことに集中し続け、新しい知識は、勉強会や実験プロジェクトなど領域を区切り、その中で存分に試そう。

  1. プロジェクトは本試合

    プロジェクトは、アウトプットを出すことに集中する。 アウトプットを出すことを主たる目的とし、その主たる目的をサポートするための知識と位置づける。 何らかのアウトプットを出すことは、それなりに時間や費用がかかるため、アウトプットを出すことを守る。 試合を楽しもう。

  2. サンドボックスの用意

    新しい知識を学習し、導入するときは、時間を作り、プロジェクトのスコープを減らすなどの調整を行った上で、試験的に運用する。 その経験を伴わない知識は、昇華され、信頼に値するものになる。 サンドボックスとは、安心して試すことができる場所や時間のことを示す。 実験し試すためのサンドボックスを作り、存分に遊ぼう。

  3. サンドボックスで試す:建設的な懐疑心

    自分の持っている成功体験や知識について、絶対的に正しいと思うのではなく、常に良い意味での懐疑的な態度を持とう。 もし正しいと信じた時点で、他の適切な情報がシャットアウトされ、成長が疎外されることが多い。 また、自分の知識が絶対的に正しいと考えた時点で、建設的な議論が困難になりがちだ。 サンドボックスで、知識を叩き上げよう。

  4. サンドボックスから本試合へ

    状況を見極めて、プロジェクトや業務に改めて、その知識を導入する。 そのときには、すでに叩き上げられた確固たる知識になっているので、安心して適用できる。 むろん状況に合わなければ、その知識を導入することは見合わせ、虎視眈々とチャンスをうかがおう。

結果

そのプロジェクトが解こうとしている問題に着目し、成果を出すことに集中することによって、副次的に経験を伴った新しい知識を得られるようになった。

一方で、勉強会やプロジェクトなどクローズドなところで、その知識を徹底的に試し、叩き上げることで、より強固な知識に得ることができた。

ただし、その自己顕示欲が強いメンバーにとってみれば、限定されることがおもしろくなく、より不満が大きくなっている。しかしながら、プロジェクトのスループットが上がり、少しながらアウトプットが出せるようになってきた。 アウトプットに応じて、品質も向上するなどのチームとして成長するようになってきた。

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Image: http://en.wikipedia.org/wiki/Sandpit

関連する情報(2014年11月3日追記)

組織はバランスをとる、ということ。

退職のときに元上司が僕に言った慧眼のコメント | 和田一郎も同じ問題のようだ。

記事にあるように、根本的には"軽く見られてしまうと劣等感"が、根本的な問題なのかもしれない。 劣等感を解消するために、相手より高い位置を確保する自己顕示欲が強く働くため、周りの人の足を引っ張ったり、もしくは、自分の信念を押し付けるなどによって、相対的に自分の支配ができるように働きかける。 その結果、チームや組織として、バランスが崩壊することになる。

なにかの本で学んだことや、シンプル過ぎるものにすべて委ねて信念としてしまうと、時として、ただの「頑固」になってしまう。

むろん、シンプルで分かりやすいものは理解しやすく、伝わりやすい。 しかしながら、それを信念としてしまうと、状況が見えず、極めて危険な状況になりやすい。 むろん、その「信念」が有用かもしれないため、サンドボックスを作り、その中で試すことを提案した。

どのように実現しているのか

似たようなブログ記事を、もう少し技術的な観点から書いていました。