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あるかどうかわからないけど、あるみたい。ありがとう。

どのぐらいしかるのか(頻度と度合い) - 子どものしかりかた (4/7)

どのぐらいしかるのか(頻度と度合い)

わからないことは宝である

営為を継続することで力をつける: 歯磨きから計算,水泳の練習から空手の稽古まで,継続の中で力をつけることができる.一度だけでは,それぞれの行為をうまくやることができない.気の遠くなるように繰り返し,継続することによって身につけることができる.継続と言えども,まったく同じことをしているわけではない.物事の理解を深め,深くそして広く学ぶことになる.

営為を継続することで極端や未知を知り器を大きくする: まったく経験がなければ,なにごとも未知のことである.未知のことを少しずつ広げることが,経験に繋がる.未知のことは,その時の範囲から超えているため極端とも言える.大きく外れているが,極端を経験することによって,未知の幅を広げることができる.わからないことを目にして,どうこうすることで少しずつ成長する1

わからないことは宝物である: このようにわからないこと(未知)は宝物である.それぞれの子どもは,宝物を少しずつ探して,自分のものにする.そのわからないことがわかるようになるまで,数年かかるか数十年かかるか,一生わからないままですごすかも わからない.

宝探しをしよう: 子どもの宝物は親にはわからないし親が見つけるものでもない.自分ならでは宝物をさがしてみよう.子ども自身が宝を見つける必要がある.

いかにわからないことに直面するのかが大切である.

しかる頻度

何度しかっても聞いてくれないから,よくしかっている

しかることには,怒りの感情が多少なりとも含まれがち であることを理解しよう.怒られる子どもは,怒った親に比べて気持ちや感情など精神的な影響が大きい2.ましてや,子どもは逃げることが困難なため,その影響は親から想像できないほど大きくなる.

怒りの感情は影響が大きいため,理不尽に怒られ続けていると身を守るか反撃にでるしかない. なぜならば,理解せずに怒られ続けていると混乱し,思考が停滞する.そのような停滞状況を回避したくなるからだ.身を守る行動は,無視する,他のことを考えるなど防御する態度をとることになる.たとえば,いつも怒られている(=しかられている)状況では,もはや無視することや殻にこもることが常態化し,どうでもよくなってしまう.場合によっては,帰宅しないなどの逃避行動にである.反撃は,炭火のように怒りの感情がたまるか,蓄積され爆発するなどの行動にでるようだ.

いちばんの問題は,しかっている内容は子どもには伝わらないことだ. そのため,どのように効率よく伝えるのかを考える必要がある.その中の一つとしてしかることがある.これは,子どもと親の状況によるため一概には言えないが,その親子を見ていくしかない.

しかられた内容を理解し,行動を修正するためには,数週間から数ヶ月はかかる. 自分自身のよくないことは習慣や癖になっていて,自動的に行われているため,すぐに修正できない.しかられたことを理解し,修正しようとしている最中に,他のことを言われても混乱するだけで,修正が遅くなる.

この「自分で生きていくために何が必要か」のポイントをどこに置くのかによって子育ての内容が違う.なぜなら,親の経験を通じて,身につけてほしいポイントが異なってくるからだ.

しかる頻度は,最小になるよう親が努力しよう. 強い態度で責めることは,健康的なコミュニケーションとは言えない.人生経験があり立場が強いのは親なので,しかる頻度を最小にするよう努力しよう.全く怒らない/しからないゼロの状態を目指そう3

口調や態度の厳しさの度合い・細かいことを気にするな

いつも怒鳴ってばかりで疲れる

口調や態度の厳しさを決めてメリハリをつける: 最初は,気がついたベースでしかっていると,その都度,子どもが心配や不安になっていた.気遣いすることを学ぶが,自分で考え,自分で判断して行動するようにはならない.そこで,どのような時に厳しく接し,どのようなときに優しく接するのかの度合いを明確にした.

口調や態度の厳しさ(例): 危険な行為は口調や態度が厳しくなり,大事ではないことは指摘するに止まる.下のリストの 1.叱咤,2.注意,3.指摘のようにリストの上のものは,口調や態度が厳しい.たとえば,このリストにあるように,子どもたちとは合意されている:

  1. 叱咤:厳しい口調
    • 生き延びるために必要なこと
    • 安全のために必要なこと(大怪我,大火傷,死亡に至る交通事故など)
  2. 注意:
    • 自分を大切にしない言動
    • 他人や物を大切にしない言動/迷惑をかけること(ただし,程度による)
    • 繰り返し無視すること(返事や挨拶)
  3. 指摘
    • 健康を損ねること(入眠や手洗いの励行)
    • 文化的な慣習(箸の持ち方/食べ方)
    • きちんと自分の意見を言わないこと
    • 卑屈になること
  4. 上記に当てはまらないこと
    • 宿題やテストの結果が悪いとき(悪けれどショックは受けるケド)
    • 忘れ物や怠けること

たとえば,交通ルールの赤信号と一時停止の無視は事故に結びつくため激しい口調で怒鳴る(なお,自分の子どもだけでなく,子どもに危害を与えそうになった他者に対しても遵守するよう厳しい口調で接する).たとえば,正しくお箸を持てない,挨拶をしないなどの場合は「食べ終わったらお箸の練習をしよう」とか「(東京において)挨拶は大切だよ」の指摘になる.言われたことが伝わっていない時は,だんだん口調が厳しくなることもあるし,他の方法を考えることもある.

このリストは,親から子どもだけでなく,子ども同士のやりとりにも適用される.たとえば,3. や 4.の内容を厳しく叱咤した場合は,指摘した人に「やさしい気持ち,やさしい言葉で伝えようね」と指摘する.このように,細かいことは気にしないよう繰り返し伝える.

いつものようにしかっていると,それはBGMのように心に届かないし,話を聞こうとは思わない.しかし,このようにメリハリをつけて接すると,子どもも心を開くし話をよく聞いてくれる.

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次の記事は 子どもが自分で行動するために判断基準を作ろう - 子どものしかりかた (5/7)だよ.

記事一覧

  1. はじめに - 子どものしかりかた (1/7)
  2. 子育てとしかることと怒ること(定義) - 子どものしかりかた (2/7)
  3. 子どもは しかって強く育てるのか,ほめて伸ばすのか,子育ての心がけ(欺瞞と正直) - 子どものしかりかた (3/7)
  4. どのぐらいしかるのか(頻度と度合い) - 子どものしかりかた (4/7)
  5. 子どもが自分で行動するために判断基準を作ろう - 子どものしかりかた (5/7)
  6. なぜしかるのか,どのようにしかるのか - 子どものしかりかた (6/7)
  7. おわりに - 子どものしかりかた (7/7)

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  1. フランスの文化人類学者・クロード・レヴィ=ストロースのブリコラージュと呼ぶものを示す.

  2. なぜ"怒りっぽい人"は嫌われ、孤立するか ポイントは「グリップ力の弱さ」:PRESIDENT Online - プレジデントの「怒る側と怒られた側、大きな意識の違いがある」を参照のこと.

  3. 現時点で,子どもたちに確認したところ,ほとんど怒らない/しかられないとのことであった.今後は,難しい時期が来るため,また異なった状態になるとは思っている.

子育てとしかることと怒ること(定義) - 子どものしかりかた (2/7)

子育てと しかること

子どもは親が育てるのか

親が子どもを育てていると考えがちだが,子どもは自分の力で成長する.たとえば農家が稲や苗木を育てる関係性に似ている.農家(親)が育てているのではなく,水や養分を吸い,太陽を浴び呼吸して成長するのは稲や苗木自身である.親や百姓は,苗木の環境を整え,水をやることはできるが,自分が育てているのではない.あくまで,苗木自身が自分の力で育っていく.稲や苗木に対して水を枯らし太陽に当てなければ,悲しい結果になるのも子育てと似ている.同様に子育ても,親が育てるのではなく子どもが自ら成長していくことを支援しているにすぎない.つまり,子育てとは,環境と関係を整え子どもの成長を支援すること である.

子どもは,自分自身の人格を持ち,子ども自身で考える他人である.子どもは,他人であるので親の思い通りに動かすことはできないし,あくまで環境と関係を整えるしかない.

子育ての関係性

よくない言動を修正するのは子どもなのか

立場の違いがある: しかることは,親から子,上司から部下,先輩から後輩のように立場や能力が違うことが前提となっている(部下や後輩との関係も似ているが,ここでは子どもと表記する).特に,子どもは立場や能力が弱く,それだけ選択肢が少なく,逃げ出すことが困難であり,しかられたことを受け入れざるをえない.

一方向のコミュニケーションとなる: あくまで立場の弱い子どものよくない言動を直すことが対象となっている.そのような関係性を前提として,親は子どもを強い態度で責めるため,本質的に一方向のコミュニーションである.「わかるよな!?」と質問しても「うん,わかった」と返事するのは,この立場が弱いことによって正直に答えられない.

良し悪しの判断は親がしている: ある言動が良いか悪いかを判断しているのは,立場が強い親である.つまり,子どもには,何が悪くて何が良いのかはわからない.しかられている子どもは,基本的に萎縮しているため正直に理由を考えにくいし話しにくい.

しかり方を修正するのは親自身しかできない: そのため「しかり方」についての修正するのは,子どもではなく親である.「子どものよくない言動を直す」ためには,立場が強く能力がある「親自身が直る」しかない.なにより,子どもだけが間違っていると認識するのは,学習する機会を増やすための謙虚さに欠けて,親自身が成長する機会を失ってしまう.

しかることとは

子どもを育てる 様々な方法がある: 成長する中で必要なことを学ぶため,この身につけてほしい必要なポイントを伝えていく.この必要なポイントは,家庭や親子によって,それぞれ異なっている.ある文化では修行にでることが必要とされ,ある文化では夢や目的を持つことが大切とされ,ある文化では現実を見ることが大切とされている.そのような異なった文化の中でも,家庭ごとに違ってくる.そのように必要なことも違う.また,その必要なことを伝える方法も様々だ.言葉を使う,態度や体を使う,環境を使うなどの方法がある.日本社会ではよく使われる「しかる」と「ほめる」に注目した.

しかることは,親の願いを伝えるひとつの方法である: 危機に直面したことなど親の文化や判断基準における違反した時に,それは違反したことと,修正することを伝えて,修正してももらいたいと願っている.しかることは,強い感情もしくは行動にそって働くため,その願いを伝えるひとつの手段である.そのため強い感情を持って相手に効率よく伝える方法といえる.相手が納得し,次からそのように行動できるようになることが「よくない言動を修正する」ことになる.

しかることと おこることは違うことか

しかるのは,子どものためで,怒っていることとはちがうのか

しかるとおこるの区別があると言われている: 叱る(しかる)とは,相手のあやまったところを指摘し,厳しく注意を与えることである.怒る(おこる)は腹を立てて相手に注意することである.やさしくしかることはできるが,やさしく怒ることはない.子育ての場面において,親が子どものあやまったところを指摘し,注意を与えることである.どちらも,相手のよくない言動をとがめて厳しく注意する意味では同じではある.

子育ての場面において,しかることは相手のためを思って厳しい言い方をしている.怒ることは腹を立てている自分の感情の一種であり,自分がスッキリするためにする行為である,と言われている.このように子育てにおいて,怒らず,しかるような論調が主流を占めている.

しかっている時は怒りの感情が含まれている: 親となってしかったときの気持ちを思い出してほしい.よくない言動に直面することによって怒りの感情を持ち,そのことを飲み込んでしかっているのではないか.つまり,親は怒りの感情を押し隠して,しかっているのだから,怒りの感情はない,もしくは少なくしていると考えているのではないだろうか.この場合,子どもに対して激昂するようなものだけでなく,家から出るなどの行動も怒りである.

子どもは怒るとしかるの区別は難しい: しかるも怒るも「強い態度で責める」ことであるため,親はしかっているつもりであっても,強い態度で責められている子どもからの区別は難しい.怒りは強い感情で隠すことが困難で,子どもはその怒りの感情を容易に見破っている.親は「怒っていない,しかっているだけだよな」と子どもに確認したとしても,子どもは,親の怒りを解除したいがために,しかっている状態を終わらせたいため「うん」と答えていることになる.激しい感情を持っている親に対して,子どもが平常心でいられるとは考えにくい.

適切に内容を伝える技術がない場合に,しかっているのと怒っているのは違う,と親が言っているのではないか: 親が怒っているだけにも関わらず,指導しているんだと自己満足し言い訳になっているのではないだろうか.「しかっている」と言い訳をしながら,自分自身がスッキリするために怒っている状態になってしまうだろう.子どもを見下し指導することによって,親子の関係性における親の地位を上に上げるための行動とも解釈できる.このように,しかるとおこるを分離することは,親は子どもを見下し,対等な関係を作れなくなってしまうことを覆い隠してしまう.

共に育って行くことを阻害する: あくまで目的は,よくない言動を修正することにある.よくないことは,子どもにだけあるのだろうか.いや,親にもよくない言動はある.これは,お互いに矛盾していると思い合っていることになる.

子育てへの関わり方

子どもはよく知らない,子どもから学ぶことなんてない

それゆえ,子どもも成長するし,親も成長するような,共に成長していく関係性を目指す: 親から子どもに良くないことを伝え,子どもから親へも良くないことを伝える.そのような情報を得ることによって,親も子どもも双方が,一緒に成長するような機会になれば,より発展しやすくなる.親は子どもの成長を取り込み,子どもは親の成長を取り込むような関係性である.

子どもはしかって強く育てるのか,褒めて伸ばすのか,子育ての心がけ(欺瞞と正直) - ari's world にあるとおり,そこではしかることも褒めることも,健全な状態で正直な気持ちを伝えることへシフトしていく.

子どもと一緒に取り組む: 親は自分自身の接し方を修正しながら,子どもと一緒に「よくない言動に取り組む」ことになる.あくまで,よくない言説が問題なだけで子どもの存在が悪いわけではない.

親自身のしかり方を修正していくことも必要である 気になることを調整することによって,共に成長することになる.実際のところ,判断基準や心がけについても,子どものとのやりとりの中で発生した.子どもだけが成長していくのも,率直なところ子育ては退屈になってしまうだろう.共に成長できるのであればワクワクして楽しい.

よくない言動を修正し,楽しく一緒に歩もう

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記事一覧

  1. はじめに - 子どものしかりかた (1/7)
  2. 子育てとしかることと怒ること(定義) - 子どものしかりかた (2/7)
  3. 子どもは しかって強く育てるのか,ほめて伸ばすのか,子育ての心がけ(欺瞞と正直) - 子どものしかりかた (3/7)
  4. どのぐらいしかるのか(頻度と度合い) - 子どものしかりかた (4/7)
  5. 子どもが自分で行動するために判断基準を作ろう - 子どものしかりかた (5/7)
  6. なぜしかるのか,どのようにしかるのか - 子どものしかりかた (6/7)
  7. おわりに - 子どものしかりかた (7/7)

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はじめに - 子どものしかりかた (1/7)

はじめに

現在,3人の子どもがいる.現在,5歳(男),8歳(男),11歳(女)となっている.しんどいことから楽しいことまで,いろいろな想像もつかないことがあった.仲がいい時も,ケンカするときもある.元気な時も病気の時もある.子育ては,衣食住を用意し,怪我や病気の回避し,お行儀やマナーを向上させ,勉強や遊びなどなど,いろいろなことがある.他の家庭と同じように,私なりに真剣勝負でぶつかってきたつもりだ.日々の生活の中で「うまくいかないなぁ」「どうだろうか」と試行錯誤してきた.この記事は,書籍や記事を直接的に参照したものではなく,子どもと向かい合ってきた経験をベースにした記録である.

時には叱るしかることや 怒るおこることもある.親も体力や気力を使うが,それ以上に子どもにとって,しかられることは気持ちや感情の上でも揺り動かされインパクトが大きい.それだけ十分に考慮しケアする必要がある.

想定読者は数年後かの自分の子どもたちである. 今後,どのようなことになるかわからないが,私がどのようなことを考え,どのようにやってきたのかをまとめておきたかった1.この記事は,ある家庭における事例ではあるため他の家庭においては違うだろう.実際の子育てをやっている最中であるため矛盾する点があるし変化していくことを温かい目で見守って欲しい2.ただ,もし読んでくださった方が,子育ての参考になりヒントになったとすれば うれしい3.

長文になってしまったため,重要な点を太字にした. 太字を追いかけると,論旨がわかるようになっている.

ポイント

本記事では,このポイントについて議論している.

  1. [ ] 子どもを育てているのは親である
  2. [ ] よくない言動を直すのは子どもである
  3. [ ] 子どもはよく知らない,子どもから学ぶことなんてない
  4. [ ] 怒るのは自分のためで,しかるのは子どものためである
  5. [ ] しかって強く育てることや,ほめて伸ばすことが大切である
  6. [ ] いつも怒鳴ってばかりで疲れる
  7. [ ] いろいろな指摘事項があるから,よくしかっている
  8. [ ] 子どもは言われたことしかやらないので困っている
  9. [ ] 何をしかっているのか わからなくなることがある
  10. [ ] なぜしかる(おこる)のかが わからないので困っている
  11. [ ] 子どもと接しているのは私だけで いっぱいいっぱいだ
  12. [ ] 気が付いた時に しかればよい
  13. [ ] 子どもは理解できないから何度でもしかる必要がある
  14. [ ] 何度しかっても,そのことをやってくれないから困っている

本文中にも イタリック体 で示した.

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記事一覧

  1. はじめに - 子どものしかりかた (1/7)
  2. 子育てとしかることと怒ること(定義) - 子どものしかりかた (2/7)
  3. 子どもは しかって強く育てるのか,ほめて伸ばすのか,子育ての心がけ(欺瞞と正直) - 子どものしかりかた (3/7)
  4. どのぐらいしかるのか(頻度と度合い) - 子どものしかりかた (4/7)
  5. 子どもが自分で行動するために判断基準を作ろう - 子どものしかりかた (5/7)
  6. なぜしかるのか,どのようにしかるのか - 子どものしかりかた (6/7)
  7. おわりに - 子どものしかりかた (7/7)

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  1. 後悔しないための私的なメモ(小さなお子さんがいらっしゃる方へ) - ari’s worldに書いてある通りだ.背景について興味がある方は聞いてください.

  2. 自分自身の矛盾は,自分自身で気づきにくいことと,解消しにくい特徴があるが,このような記事を通して修正していきたい.

  3. ワークショップやサロンなどで,みなさんの意見をうかがう機会を作りたい.

子どもが自分で行動するために判断基準を作ろう - 子どものしかりかた (5/7)

子どもが自分で行動するために判断基準を作ろう

子どもは言われたことしかやらない

しばしば このようなやりとりがあった:

子「学校の宿題と,稽古はどっちが先にやるの?」
親「学校の宿題が先だね」
子(宿題をやる前に,本を読んで勉強している)
親「宿題を先にやらないの?」

たくさん聞いてくれてうれしい反面,どのように順番を決めればいいのかわからず困っていることに気づいたのである.

背景と方針:子育ての願望とジレンマ

子育てとは,子どもの成長を支援することである.子育てにおいて,いろいろな親の願望があるが,うちで代表的な例を紹介したい.

自立して欲しいと願っている, 自分で考えて行動でき,自分で食べていけるようになってほしい.自分でいろいろなことをわかるためには,様々な経験が必要になる.特に,極端な経験や失敗は,いい思い出にもなり大きく成長させられる.たとえば,海で遠くまで泳ぎ,潮の流れにハマってしまったとか,木に登ったけど降りるのが難しくなってしまったとか,いろいろな経験や失敗を元に成長している.いろいろな経験をすることは 行動の選択肢を増やすこと(自由にする) を志向している.美味しい料理を食べるのも楽しむのも経験するのは子ども自身であり親ではない.

健康に育って欲しいと願っている. 事故や怪我にあわず,健康に育ってほしい.たとえば,交通事故や大きな病気に回避したいし,もし怪我や病気をしていれば快癒してほしいと願っている.事故や怪我,失敗を回避することは 行動の選択肢を減らすこと(制限する) を志向している.

この願望にはジレンマがある. どちらの願いも子どもを思ってのことだが,違う志向性を持っている.いろいろ経験や失敗をしてほしいが,一線を超えてしまうと事故や怪我などによって継続的な幸せを享受できなくなってしまう.それ以外にも,他人に迷惑をかけてほしくないと願えば.他人への依存度を増やすことと,他人から依存度を減らすことジレンマもある.日常生活においても,このようなジレンマが発生するのが常ではなかろうか.

親自身も,子どもだった時からの経験が積み重なり,それが元になって願望が生み出されている.このような願望は,親の傾向は子どもに連鎖することが言われており,意識しないで判断や行動していることが多い.

判断基準

それゆえ,自分たちが判断するときの基準(判断基準)を共有し,それを前提にして基本的に自分で考えるようにする. 判断基準とは,ある状況下でどのように行動するかということ,物事を判断する際のよりどころとするもの 1である.自立と元気の育つために必要な判断基準を共有し,それの上で自分で考えて行動すればよい.その了解された判断基準に基づいて行動すれば,おおよそのところでブレない.

判断基準は,それぞれの家庭や文化によって大きく異なるが,大きく異なるが故に,共有が難しい. 日常生活において葛藤やジレンマが発生していることは,ある程度の判断基準を決めておくと楽になる(考えなくて済む).

妥当な判断のためには,情報の透明性を向上させ,情報量を増やすことも大切である. 子どもは,自分で認識し考えている.本稿のような判断基準を用いた上で,子ども自身が自分で感じるように仕向けるようにしていく.できる範囲で「本物に触れる」「正直に話す」「隠し事をしない」などの心がけも妥当な判断をしていく支援となる.

判断基準の内容

  • 最小限の判断基準を目指すこと
    いろいろなことを考えたくなるけれど,大切で外せないものだけを判断基準としたい.最終的には,自分だけで決めていくように順次すすめていく.
  • 具体的な行動に関連付けられること
    「ちゃんとする」「きちんとやる」ではなく,外出前に身だしなみを鏡でチェックするなど具体的な行動に関連付けられるようにしておく.
  • 現実的で合理的であり運用可能であること
    特に子どもは理想や夢を追い求めたくなる.しかし,理想を追い求めてしまうと,続かないし実情から乖離してしまう.簡単に使えることが大切である.
  • 緊急時や例外処置を決めておくこと
    大人に相談する,110番やセコムで呼び出しなどを決めておく.できる限り現物を確認すること.

判断基準の決め方

  • 一緒に話し合うこと
    なぜ大切なのか,どのような問題や事例があったのか,どのように感じているのかを一緒に考えよう.あらかじめ親同士(同居している夫婦や祖父母)で話し合うのも重要である.
  • 判断基準は個別のもの
    それぞれの状態に応じて一緒に話し合うこと.たとえば,5歳児であれば,5歳児も理解できるようにする(例:車から降りるときは一緒だよ).たまたま共通の判断基準があるかもしれないけれど,それぞれの個別の判断基準を尊重すること.
  • 判断基準は仮のもの(変化する)
    成長に伴って不要になる判断基準もある.たとえば,幼児の頃はトイレのドアを開けて運用していたけれど,成長に伴ってドアを閉めるようになるなど,当たり前のことが変わる

判断基準の例

なお,現在11歳,8歳,5歳の子どもと数年間のやりとりから判断基準の例を紹介する.子どもの人数,性格や年齢,家庭状況そのほか 様々な状況によって判断基準は異なるので,あくまで事例として参考にしてほしい.

  • 安全と健康が優先
    • 子どもたちだけで火を使ってはいけない(親と一緒に練習しよう)
    • 子どもたちだけで玄関を開けてはいけない.困ったときは (1)親に電話,(2)セコムの呼び出し (3)110番する.
    • 地震発生時や災害時の対応を決めておく.
    • ファミレスやコンビニの駐車場では親の近くにいること(車の運転席から子どもが見えないことを体験させる)
    • 公園では,子どもから親が見えるところで遊ぶ(5歳児のみ.ちゃんと見ていないとダメだけどね)
    • たくさん体を動かしてぐっすり寝る.「夜になっても眠くならないときは遊びが足らん!もっと遊べ〜!!」
    • ご飯を食べてから,おやつを食べる.「ごはんを残したら おやつは なぁーし!!(eテレはなかっぱ』)」
  • 自分を大切に
    • 「こだまでしょうか(金子みすゞ)」のように他人に向けた言葉や行動は自分に戻ってくる.自分とご縁のある人や物を大切にしなさい
    • 親も先生,教科書も間違えるときや わからないときがある.信じてはいけない,疑いなさい.
    • 細かいことや他人を気にしすぎると 自分がつらくなるよ
    • 例外:試合や試験など無理してでも頑張る
  • 学校優先(小学生)
    1. 手洗いうがい+水分補給(学校より,健康が優先される)
    2. 夏と冬はエアコンを入れる(なぜか忘れて体調を崩す)
    3. 基本的に,学校の宿題と用意が優先
    4. 計画したタスク(遊びも含まれる.別途「家庭の計画づくりとタスク管理」で書きたい)
  • 「あきらめたらそこで試合終了ですよ」
    漫画『スラムダンク』より具体的な行為があったときに引用する.たまに安西監督の絵を見る.

4つの判断基準を紹介した.使い方は,日常生活の中に,この判断基準を織り込んで使う.たとえば,他人を傷つけるような言葉を使ったときは「自分を大切に」と伝える.たとえば「友達に届けたいものがあるから(学校優先より)先にやったよ」のように会話は成り立ちやすい.早く寝ないときは「安全と健康が優先だよ」の健康である.最近は子どもたちから早く寝ようと言われることが多い2.家族の中で普遍的な判断基準があるため,平等に意見を言うことができる.

判断基準を作ったところ(結果)

子どもたちは判断基準を使って自分たちで考えて行動することが増えた.わからないときは聞いてくれるし,場合によっては提案もしてくれる.たとえば「車のドアを開けていいときは安全を確認してから教えてほしい」などの提案があった.親としては安心して過ごせるようになってきたし,楽になってきたように感じる.親の考えだけでも子どもの考えだけでもない状態とも言える.

小学生の子どもは,たくさん宿題があるし忙しいからだろうか,このような標語としての判断基準を多用し,効率的なコミュニケーションを図っている.ただし,5歳の保育園児は,標語としてほとんど使っていないようである.このあたりは継続して見ていきたい.

これからは,このような判断基準を話し合う必要もなくなるかもしれないし,内容がもっと高度になるかもしれない.なにはともあれ,子どもたちに「生きていてほしい,できれば すこやかに過ごしてほしい」と心から願っている.

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記事一覧

  1. はじめに - 子どものしかりかた (1/7)
  2. 子育てとしかることと怒ること(定義) - 子どものしかりかた (2/7)
  3. 子どもは しかって強く育てるのか,ほめて伸ばすのか,子育ての心がけ(欺瞞と正直) - 子どものしかりかた (3/7)
  4. どのぐらいしかるのか(頻度と度合い) - 子どものしかりかた (4/7)
  5. 子どもが自分で行動するために判断基準を作ろう - 子どものしかりかた (5/7)
  6. なぜしかるのか,どのようにしかるのか - 子どものしかりかた (6/7)
  7. おわりに - 子どものしかりかた (7/7)

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  1. https://thesaurus.weblio.jp/content/判断基準より

  2. やることあるんだけど添い寝は気持ちいいので従ってしまうことが多い.

子どもは しかって強く育てるのか,ほめて伸ばすのか,子育ての心がけ(欺瞞と正直) - 子どものしかりかた (3/7)

しかって強く育てるか,ほめて伸ばすか

しかって強く育てることや,ほめて伸ばすことが大切であるのか

「子どもをしかって強く育てる」 という考え方もあれば,「子どもはほめて伸ばす」 という考え方もある.

「しかって強く育てる」 は,若干オールドファッションのようだが,根強く残っている.世の中はつらく厳しいことがあるので,それに対抗するためには厳しく接する練習も必要であろう.

ある例では,子どもに対して厳しくしかっている.たとえば,親に対する敬語がなっていない,用意に時間がかかってしまった,食べた量が少なかった…いろいろしかるものがあるんだなぁ,と感心しまうほどだ.その結果,その子どもは,話を聞いて意味を理解する能力を損ない(=聞き流す能力は高まり),殻に閉じこもってしまいがちだ.

「ほめて伸ばす」 ことの大切さが,いろいろなところで主張されている.しかったり怒ったりせず,子どもの良いところを伸ばしていく.確かに子どもは集中して自分の得意なところを伸ばすことができるだろう.

ある例では,子どもに対してほめて伸ばすことを徹底している.望ましくない言動があっても,決してしからない.たとえば,自分自身の親に対して「ろくでなし」と言ったり,相手を馬鹿にするような言動を続けても,決してしからない.その代わり「○○ちゃんは,よくないことがわかるよね(猫なで声)」と諭すだけであった.むろん,ちょっとの良いことを見つけてはほめまくっていた.その子は,いろいろな大人に対して傍若無人にふるまう一方,つまらなそうにしていることが多い.

ほめて伸ばすことと,しかって強く育てることのどちらにも無理がある

どちらも,親は自分の望むよう恣意的に接していて,相手と自分の状態がわからないため,すこやかな成長が難しい.適切な成長とは,自分の感じたことを大切にし,状況に応じた妥当な判断と学びができることである.

  1. 親は,自分の望むように子どもを操作しようとしている
  2. 親は,子どもが何を感じているのかを観察していないため,わかりにくい.
  3. 親は,感情や気持ちに結びついていない表現になる

その結果,子どもからは,以下のようにとらえられる.

  1. 子どもは,親の本当の気持ちや感情がわからない
  2. 子どもは,親がどのように感じ,どのように困難に対処しているのか学べない
  3. 子どもは,自分の感じたことを正直に表現しにくい

つまり,対等な個人間の健全な相互コミュニケーションが成立できない問題があり,適切な学びと成長に結びつかない.

子育ては正直さの心がけが大切である

それゆえ,できる限り正直に伝えることを心がける. 子ども自身の言動に対して感じたことを正直に伝えるように心がける.そのため,子どもからは,親が何を感じているのかよくわかるだろうし,もしわからないときは正直に聞くことができる.

ここでは,一般的に言われている通り,正直さとは,自分の気持ちや感じたことに嘘や偽りのないこと,隠し立てがないことを示す.むろん,完全な正直さを意味するのではなく,正直でいようとする態度を示している.

親自身の経験や学びも話す. 子どもに対して感じたことに加え,親自身がかっこ悪いときも失敗したときも正直に話している.そして,どのように心がけているか,どのような作戦を立てているのか,このようにしたけれどダメだった,もしくは上手くいった,のように手の内を隠さず正直に話す.すべてのことを話すことは時間的にも無理があろうが,思いついたレベルで話し合っている.

正直に話すことで情報量が増える. 隠し事をしない正直でいる努力によって,情報の透明性が向上する.情報の透明性が向上すれば,子どもの学習を促進し,判断の妥当性が向上する.親は,子どもの興味や能力によって理解できるように,無意識にふさわしい情報は選別していることになる.しかし,子どもとのやりとりの中で「オープンになんでも話すような心がけ」によって子ども自身での学習と判断を支援したい.

正直に接するために

正直に話すためには,それ相応の自信とそれを裏付ける経験が必要である. ただ,子どもを育てる覚悟を決めた以上,いいところだけでなく,悪いところも含めて子どもに感じてもらう.

正直に話せるよう健康的な状態を心がけ,お天道様に恥ずかしくない生き方を目指していく. 親自身がダークサイドに落ちている/疲れているなど親が不健康な状態であると,子どもにそのように接することになる.相手を見下し傷つけ優越感に浸ることを目的に,正直に言うことは不健康な状態である.体を動かす睡眠を十分にとるなど,健康的な状態を心がける.

その結果,子どもとの健全なコミュニケーションが成立していく. むろん,自分自身の矛盾は,自分自身では気づきにくいが,子どもからの正常なフィードバックにより,その矛盾に気がつくのである.子どもも親も共に学び,すくすくと成長できるようになるだろう.

正直さと適用

成長段階に応じて,正直さを大切にした場合の典型的な適用した場合は,どのようになるのだろうか.1

子どもが赤ん坊であるときは弱々しく,守り育てたいと感じることが多い.このような時に,守りたい育てたいと,ほめるようなコニュニケーションが多くなる.むろん,このような時期にしんどい感情になったときは,それ相応の相談をし,支援を受けていくことになるだろう.

だんだん成長するにつれ,生意気な態度を持ち「いらっ」「むかっ」と感じることも増えてくるのは,自我が育つ大切な過程である.親が,このように「いらっ」「むかっ」と怒りを感じた時に,良いところを探して無理にほめたらどうなるだろうか.子どもは,怒られているのかほめられているのか区別がつかなくなり,適切に学び,すこやかに成長することにはならない.子どもにとって,このような矛盾し混乱した状況は何よりもしんどい.あくまで家族が健康的な生活を心がけた上で「いらっ」「むかっ」としたことを正直に伝え,学んで成長する.

このように相手の存在と状態を認めた上で「自分がどのように感じるのか」を大切にして,健全なコミュニケーションを実現しながら,子どもだけでなく親も一緒に成長していきたい.

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次の記事は どのぐらいしかるのか(頻度と度合い) - 子どものしかりかた (4/7)だよ.

記事一覧

  1. はじめに - 子どものしかりかた (1/7)
  2. 子育てとしかることと怒ること(定義) - 子どものしかりかた (2/7)
  3. 子どもは しかって強く育てるのか,ほめて伸ばすのか,子育ての心がけ(欺瞞と正直) - 子どものしかりかた (3/7)
  4. どのぐらいしかるのか(頻度と度合い) - 子どものしかりかた (4/7)
  5. 子どもが自分で行動するために判断基準を作ろう - 子どものしかりかた (5/7)
  6. なぜしかるのか,どのようにしかるのか - 子どものしかりかた (6/7)
  7. おわりに - 子どものしかりかた (7/7)

読んでくださり,ありがとうございました.よろしければシェアや いいねをお願いします.


  1. 2017年12月11日 Facebookで成長段階についてのコメントをいただいたので参考にして追記した.ありがたや.

コミュニティからフレンドシップへ

Title: コミュニティからフレンドシップへ Date: November 22, 2017

要約

コミュニティとは,一般的に関心(興味,問題意識,目的や制約)を共にする人たちの集まりである.コミュニティには流動性の問題があり,募集と参加の障壁,時間と関心の障壁によって引き起こされる.

これらの問題を解消するためにフレンドシップ(友人関係)へシフトすることを提案する.関心に着目したコミュニティではなく,どのような人と関係するのかに着目するフレンドシップの重点が増していく.フレンドシップとは,友達や仲間であり,なんとなく一緒にいる,一緒に遊ぶ,一緒に取り組む関係性である.フレンドシップは,コミュニティに比べ関心が限定されない ゆるやかな関係性のことである.フレンドシップを通じて,コミュニティやプロジェクトを立ち上げる.

ゆるやかな中長期的な関係性を維持するフレンドシップによって,関心に左右されにくくなり,募集と参加,時間と関心の障壁が弱まる.フレンドシップを楽しもう.

はじめに

自分の参加しているコミュニティに若い人が来ない,という嘆きをSNSで読んだ.どうも同じ人ばかりが参加しているようだ.いろいろなテーマ設定にしても,参加するのはいつも同じような人ばかりらしい.

若い人と書くからには,それなりの年配なんだろうか.言われてみれば,年上ばかりの人たちで構成された,すでに仲の良いコミュニティがあったとすれば,そこに参加するためには少しばかりの勇気が必要だ.関心(興味,問題意識,目的や制約)が違えば,無理に入る必要もないだろう.そもそもコミュニティと,その利点はなんだろう.

ここでは,1.コミュニティの流動性と,2.これからのコミュニティについてちょっと考えてみたので,肩の力を抜いてエッセーを楽しんでいただけたらな,と願っている.

コミュニティとは

コミュニティとは,一般的に関心(興味,問題意識,目的や制約)を共にする人たちの集まりである. たとえば,地域のお祭りや商店街のコミュニティもあるだろう.ITに関する分野には,方法論や技術について議論するコミュニティや,指定された本や資料を読書して話し合うコミュニティもある.研究においても,コミュニティが形成されることが多い.ここでは,主に勉強会や読書会のような定期的に開催されるコミュニティを想定している.

コミュニティと自立

普段,仕事や家庭だけでのように人間関係が限定される状況はあり,窮屈に感じてことはある.そのような時に,仕事場や家庭以外のコミュニティに参加することは新たな人間関係を作り出す機会を得られる.出会いや仕事の機会を増やせる期待もあり,コミュニティは新たな依存先を増やすことを支援する.つまり 「自立は、依存先を増やすこと」1であるためコミュニティに参加することによって自立するお手伝いができる.

コミュニティの留意点

コミュニティは,目的や価値を実現するために作られ,同じ関心(興味,問題意識,目的や制約)を持つ人たちが集まる.同じ関心を持つ人たちが集まると,それを守ろうとする規範意識が強くなる.その強まった規範意識は,目的を達成する一方で,守るための意識が強くなる.

この規範意識を守ることは,正義感や優越感などの感情や差別意識を持つことが多い.それらの感情や意識を持って人々に接することは快感でもある.その正義感を持ったことが,いじめや排除の問題が発生する原因になる.

つまり,コミュニティ活動は,家族や勤務先以外の依存先を増やす自立をうながす.しかし,コミュニティ自身の関係性に絡め取られ,依存先を減らす自立を損ねる留意点がある.そのためにも流動性の問題は,コミュニティ維持におけるポイントとなる.

流動性の問題

問題は,老若男女に関係なく新しいメンバーが入らないことのようだ.流動性がないと,いつも同じメンバーが集まっているため,議論に発展性がなく,つまらなくなってしまうのかもしれない.

コミュニティに人が集まらない理由をゆるく考えてみた:

募集の問題とお誘い

そのコミュニティについて知らない,十分に伝わっていない可能性がある.たとえば,きなこもち研究を行うコミュニティがあったとしても,十分に告知されていなければ参加しない.

もし,そのコミュニティで扱っているテーマや価値が期待されなければ,参加できないジレンマがある.「きなこもち」を知らなければ,その研究会に入らないし,知っていたとしても日々の生活で十分である.

昔ながらの方法は,長老や有力者から声をかける,断れない状況でお誘いする,という方法がある.たとえば「もうそろそろ君はきなこもちの研鑽する時期ではないか」みたいな声がけで始まる.しかし,参加するメリットがなければ「うぜー」「めんどー」みたいな反応が多いかもしれない.結局のところ,人が人を呼ぶ形になって,いろいろな人が集まっていくような形態になっていくのだろう.

参加の障壁と未知のジレンマ

すでにコミュニティがあって,そこに新たに参加することに障壁を感じる人はいる.私自身も,他のコミュニティに初めて参加する時に,少しの勇気がいる.「気楽に参加してよ」って言われても,なんとなくコミュニティの雰囲気や文化などが,自分にふさわしいかどうか参加してみないとわからない.胡散臭さ(うさんくささ)やインチキっぽい雰囲気を感じると,より参加が遠のく.

そもそも,勉強会のようなコミュニティの場合,参加する前に,そのコミュニティの関心について参加者はわからない.十分にわかっていれば参加する必要がないだろうし,価値がわからず知らなければ参加することもない.

コミュニティ運営側は,透明性や安全性を広く告知すると共に,その内容について知らせなくてはならない.しかしながら,知らない人に関心を持っていただく関係で,そのコミュニティの成果や効果にわかりやすく伝える必要がある.わかりやすく関心を持ってもらうために「いろいろな問題を解決できます」「深い味わいを楽しむことができます」のように大げさに伝えがちである.

その結果,過大広告のようになってしまい,胡散臭さ(うさんくささ)やインチキっぽい雰囲気に繋がり,初めての参加への躊躇へとつながってしまう.

コミュニティ活動と仕事と家庭と優先順位

生活や仕事とのワークバランスの大切さが言われている.働き方改革のような言葉もよく耳にする.そのような中で業務時間から大きく超過するような時間や手間をコミュニティに使うことに躊躇する人は多いかもしれない.

コミュニティと仕事との優先順位もある.コミュニティ活動が業務に直結する場合もある.たとえば,営業やフリーランスの場合はコミュニティは貴重な営業の機会となる.学習と出会いによって将来の機会を広げられるかもしれない.しかしながら,そのような直接的なつながりが明らかではない場合は,コミュニティ活動より,限られた時間を独学や業務に使うことになる.そのためコミュニティに参加する主体性や社交性などの機会を満足させるためにコミュニティに参加することになる.

コミュニティと家庭との優先順位もある.たとえば,勉強会のようなコミュニティ活動は平日夜や土日休日に開催されることが多い.しかしながら,子どもを含めた家族が帰宅し,一緒に過ごせる時間と重なっている.掃除や洗濯のような作業ではなく,いろいろ話し一緒に泣き一緒に笑う,ような時間を共有することに価値を置いているため,家族との時間は替えがきかない.つまり,コミュニティ活動できるのは,それに効果を感じつつ,かつ業務や家庭と調整可能な人たちだろう.

関心の問題と独立したコミュニティ

いろいろな情報があふれ,それが大量に飛び込んでくるなかで様々な関心を持っている.その人それぞれの関心が異なっている.ましてや,年代が違えば,その関心や問題意識も違う.

基本的に関心が異なれば,違うコミュニティに参加する.地域コミュニティも,主に自分に関係した地域や主体的に参画できるコミュニティに参加する.自分の興味や関心と異なったコミュニティでは,有意義な参加にはならない.

つまり,それぞれ独立したコミュニティを持つことがよいだろう.たとえば,地域コミュニティでも「青年部」「婦人部」のように分離することもあっただろう.きなこもちが好きな人もいれば,磯部やからみもちが好きな人もいる.このように別々の独立したコミュニティによって,それぞれが意味のある活動が可能になる.

それぞれの複数のコミュニティが独立し,その上でそれぞれが交流できればよいのではないか.きなこもち,いそべもち,からみもち,あんころもちの関心を持つ人が,それぞれ別々のコミュニティに属するのは自然であろう.

コミュニティのこれから

コミュニティのメリットと留意点を考え,これからどのように変化していくのかをゆるく考えた:

フレッドシップへ

このように,コミュニティとは,それぞれの関心に伴って作られるものであった.しかしながら,依存先を減らしてしまう可能性も示唆された.それぞれの興味関心を持っているのは当然のことであるし,複数のコミュニティが生成されつつも,これらのコミュニティには,流動性と自立の良さと留意点があった.

それゆえ,関心(興味,問題意識,目的や制約)に着目したコミュニティではなく,どのような人と関係するのかに着目するフレンドシップの重点が増していく.フレンドシップとは,友達や仲間であり,なんとなく一緒にいる,一緒に遊ぶ,一緒に取り組む関係性である.フレンドシップは,コミュニティに比べ関心と目的が限定されない ゆるやかな関係性のことである.

フレンドシップは,以下のような特徴を持つ:

  1. 固定化された関心(興味,問題意識,目的や制約)を持たず,流動的で複数の関心を持つ
  2. 相互に観察と理解を前提とし,コミュニケーションを保ちながら,ゆるやかな関係性を維持する
  3. フレンドシップの中から,一時的な関心と興味をベースとしたコミュニティ(場合によってはプロジェクトやチーム)を立ち上げる

複数であやふやな関心を持つ長期的な関係であるため,状況の変化と,関心の変化を許容する.それぞれのコミュニケーションを保ちながら,関係性を継続する.その中で,短期もしくは中長期的な関心をベースとしたコミュニティやプロジェクトを立ち上げる2. フレンドシップを維持しながら,いくつかのコミュニティやプロジェクトを変遷しながらも関係性を維持する.

フレンドシップがゆるめるもの

フレンドシップは,コミュニティの問題をある程度は緩和できる:

  • 募集の問題 については,中長期的な関係性を前提とするため,新たな募集についての必要性が薄れてくる.SNSや地域などのやりとりを通じ,機会を得る.ただし,フレンドシップのネットワークから あぶれてしまう人たちもいるため,マッチングや機会の提供などのビジネスや行政支援などが大切になってくるだろう.
  • 参加と未知のジレンマ については,関心の流動性から知らなかったことについて,フレンドシップを通じて通常の情報交換として解消する.
  • 仕事と家庭との優先順位 については,似たような生活パターンになっている時に繋がることができる.逆に,中学時代の友人と定年後に遊ぶように数十年もフレンドシップを続けながら,数年に渡って全く対面しないようなスタイルをも許容する.

今まで,情報社会が発展していなかったため,同じ場所や同じ目的に応じて集まる必要があった.LINEやFacebookInstagramのようにSNSを通じ,世界中の人たちが関係するようになってきたため,同じことを前提とする必要がなくなった.変化に富んだ自由な関係性の中で,お互いの興味や関心を共有し続けることで変化や多様性に対応する.

このような関係性を実現し維持するための前提は,尊敬や謙虚,信頼に基づいたコミュニケーションである.遊びの中で勝敗はあれど,立場はあくまで対等でマウンティングや上下の関係は弱く否定される.SNSや役割に応じた性格として認識されており,さらに多様性は増す.

コミュニティも,異なった関心や話題を持っていても,ほぼ同じ人が参加していると聞くため,すでにフレンドシップ主体になっているのではないだろうか.「若い人」もすでにある既存の友人関係で十分に事足りているのかもしれない.もし新たな関係性を見つけたいときはコミュニティに参加する,もしくはコミュニティを立ち上げるのも選択肢の一つである.

おわりに

論語には「君子は和して同ぜず,小人は同じて和せず 3」とある.和とは,それぞれが異なっており,和音を奏でるような様である.たとえば,先の例に用いれば,きなこもち,いそべもち,からみもち,あんころもちの好きなものを尊重し,それぞれ食べればいいのではないか.

いままで人間の歴史を通じてフレンドシップは尊重され大切にされてきた.ますますフレンドシップは,大切になってくるのだろう.

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私自身,友人に恵まれ助けられてきた.感謝してもし尽くせないほどである.これからもよろしくお願いします.また私の至らぬことで友人を辞められたかもしれない,どうかお許しください.そして,まだつながっていない場合は,ゆるくつながっていきましょう.

そんなこんなで,ゆるゆると すこやかに参りましょう.


  1. 綾屋 紗月 熊谷 晋一郎『つながりの作法 同じでもなく 違うでもなく (生活人新書)』

  2. ここでのプロジェクトとは,短期的な成果を実現するための時間と領域限定のつながりであり,コミュニティに比べより厳格な関係性を維持する.

  3. 金谷 治訳注 の 論語 (岩波文庫 青202-1)

試験勉強や受験勉強についてのメモ

Title: 試験勉強や受験勉強についてのメモ Date: 2017/11/18

はじめに

私は受験勉強や試験勉強をしなかった(試験勉強のフリはある).ただ小学生のとき,図書室の本をほぼすべて読み尽くした.本を読むのと同じように楽しんで教科書や参考書を読んだだけで,試験や受験のために点を取るための勉強に興味がなかった.

しかし,この方法は,子どもを含め他の人には あまり効率的ではないようだ.試験勉強や受験勉強をどのように指導するのかよくわからず困っていた.

そこで,小学生の中高学年を対象とした勉強について この週末に話し合ったことをメモした. これから必要に応じてアップデートしていきたい.また,小学以上の中学生や高校生などの勉強についても,ある程度は参考になると期待している.

ここでは,実体験に基づく幅広い学びではなく,狭い意味での一般的な教育課程で学ぶことを勉強とした.なお,子どもへの説明時はすべて図や具体例を使って説明している.

動機(きっかけ)

  1. なぜ試験を受けるのかを考える
  2. 中間目標として試験や受験を考える
  3. 何を勉強するのか(参考:10年後や20年後でも通用することを学ぶ)
  4. 中間目標に至る道筋を考える(どのように勉強をするのか・何をしないのか)

方針(作戦)

勉強するための方針

  1. 勉強 = 効率(質) × 時間
    • 同じ効率であれば,長い時間である方が有利.
    • まずは時間の確保が必須.一週間の予定を明らかにして,どれだけ勉強できるのか調べよう
    • 最初は時間を確保し,その中で効率を上げる方法を検討していく.
    • 効率をどのようにあげるのかを,常に検討しながら進む
    • 何をやるのかで増やすのではなく,何をやらないのかで減らすことを検討する
  2. 継続
    • 最後まで諦めない 人が勝利を手にする.「諦めたらそこで試合終了」
    • 継続は力なり たんたんと習慣にしていこう

問題を解く流れと勉強する流れ

  • 問題を解く流れ
    1. 問題を読む
    2. 問題を理解する
    3. 方針/作戦を考える
    4. 問題を解く
    5. 確かめる
  • 勉強する流れ(カリキュラムの構成)
    1. 解く上での前提となる知識を学ぶ
    2. 問題を解く方法を学ぶ
    3. 方針/作戦を考える方法を学ぶ
    4. 何が問題になるのかを学ぶ
    5. これが次のステップの前提となる.

基本と応用

  • 基本がしっかりしていないと,それ以降の発展が難しくなるため,まずは徹底的に基本を身につける.
  • 基本とは,足し算と掛け算を比べると,基本となっている足し算のことを示す.
  • 基本を身につけるためには,繰り返しの練習が必要
  • 応用問題を解いた後も,基本ができているかを確認する

勉強方法(効率/質)

  • 基礎
    • 算数/数学でも基礎が重要になってくる
    • 基礎ができていないと,応用問題が解けないので,徹底的にやろう
    • 毎朝,時間を決めて計算問題や漢字など,基礎となる箇所を徹底的に学ぼう
  • 論理 :主に数学/算数,理科の考える科目
    1. 習っていることの関係性や構造(論理)を丁寧に理解する
    2. その論理を使って問題を解く
    3. 整理してわかりやすく解くため途中式をキレイに書く
    4. 論理立てて考えるため途中の式をスキップしない(最初のうちは式を飛ばさない)
    5. 間違えたところについて,論理の理解を深め,適用を修正する
    6. 論理の範囲(使えない問題は何か)を知る
    7. (ここで,論理とは ことばとことばの関係性を意味し,関係づけて考えることを論理的な思考と呼ぶ.ただし,論理的な思考は国語を含めた他の教科でも学べる)
  • 理解 :社会・理科・漢字
    1. その出来事や文字が作られた背景や意味を想像しながら覚える(たとえば「関ヶ原の戦いでの裏切り」,漢字「和」の由来などを含めて)
    2. その出来事について議論してみる(自分だったらどうしよう)
  • 読解 :国語
    • 問題文の要約を一緒にやる
  • 記憶 :社会・理科
    1. 何を覚えるのかを決める(要点チェック/プリント)
    2. 解答や教科書を見ながら,ていねいに正解を書く
    3. 正解を見ながら,丸ごと覚える
    4. 覚えた内容をノートに何回か練習する
    5. ただし,暗記すると考えることが減るため,できる限り暗記しない
  • ノート
    • 理解したことをていねいに書く(練習が必要)
    • ポイントを押さえて書く(練習が必要)
    • 空白を作って書く(たとえば,左半分は空白にするなど)

方法

勉強方法(時間)

  • 計画
    • 全体の計画を立てる
    • 一ヶ月の計画を立てる
    • 一週間/一日の計画を立てる
    • 計画は目安なので,あまり気にしすぎない
    • 息抜きも忘れずに
  • 実施方法
    • 一週間の計画を作る
    • やりたいことのチェックリストを作り,それに従ってやる
    • 実際にできたことをベースにチェックリストを更新する

試験前の一週間(一ヶ月間)

  1. 難しい問題を解かず,基本問題を繰り返す
  2. 自分の使っている教科書/問題集を決めて,他の教科書や問題集に手を広げすぎない
  3. 基本に忠実.基本を守る.
  4. 悩んだ時は,質問する/話す

試験やテスト

試験直前に

  1. 用意するもの
    • いつものカバンにする(カバンを変えると忘れ物が増える)
    • 鉛筆をきちんと削り,消しゴムもキレイにする
    • 壊れたり落としても大丈夫なように,二つ以上用意する(例:消しゴムは二つ,定規は二つ,鉛筆は10本など)
    • 温度調整できる服装にする
    • マスクを用意して自衛する
  2. リラックスする
    • 横になり伸びをする,肩の力を抜く(手足と体をぶらぶら),
    • 目をつぶり,深呼吸する

試験中に

  1. 問題を開けた時に
    • 全体を見て,点が取れそうなところを考え,そこから着手する
    • 速度の問題の時はカブトムシを書くなど,大切なルールを確認する
  2. 読む:問題を正しく理解するために(問題理解)
    • 線を引きながら問題を読む
    • 図の問題は,求めるところに印をつける
    • 何を求めているのか(時間なのか,速度なのか,単位は何か?)
    • 図示する(グラフ,線分図,表など)
    • 図の問題は,印をつける.
  3. 作戦:作戦を立てるために
    • 問題が正しく読めれば,作戦は立てられる
    • どの作戦がふさわしいかを確認する
    • 解答を見て,論理の違いを理解する(解答が,最も良い作戦かは別)
  4. 間違えないために(算数/数学)
    • 計算を始める前に,作戦が正しいのかを確認する
    • 式の順番を(かっこ)でくくる
    • 式をキレイに書く,途中の式をスキップしない(いきなり式を飛ばさない)
    • 数字や式の途中に うつし間違いがないかを確認する
    • できるだけ検算する(一番最後にやってもよい)

試験後に

  • 分析と対策
    • どこをどのように間違えたのか確認する
    • 間違えたポイントを修正する方法/対策を考える
    • 間違えたところを何度も解き直す
  • 復習を大切に
    • 学んだことは熟成の期間が必要である
    • なんどもなんども同じ問題を解く
    • 学んだところを,翌日,三日後,一週間後,一ヶ月後に見直す

おわりに

なぜ勉強するのだろうか.なぜ世界中の多くの国には,子どもたちへの教育を大切にしているのだろうか.今,勉強していることは未来に役立つだろうか.

先生や親から言われたから勉強しているのか.勉強はつまらないことか.

なぜ生きるのだろうか.なぜ苦しいのだろうか.

今までの人たちも同じように苦しみ,もがき,そして楽しんで生きてきた.そのなかで少しずつ進んできた.これから僕たちはどのような一歩を踏み出せるだろうか楽しんでいきたい.

参考図書・関係記事

参考図書

関係記事

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追記

書き忘れたことなど

  • 2017年11月26日:基礎や基本が大切なのにも関わらず,あまり強調されていなかったので,その部分を追記し強調しました.徹底するぐらい,徹底して基礎や基本を鍛えましょう.